Paraller
□おかえり
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僕たちを例えるならば白と黒
でも、その間の子に白が生まれることはない
だって、僕のは罪の証だから
この子たちに、同じ思いをしてもらいたくないから...
そう言って、母は涙を飲み込んでいつも微笑んでいた
≪おかえり≫
長い廊下の真ん中に背中まで髪を下ろした少女が居た
何かを探しているかのように、立ち止まったり辺りを見渡したり
何度も不安そうな顔をすれば、その足を前に進める
「おいっ!」
不意に後ろから声をかけられ、振り返れば長くのびた黒髪が視界に広がる
その手には彼には似つかない小さな子供の手があった
「ユウ!ルナ!!」
今まで不安そうにしていた表情は姿を消し、花が咲いたかのように笑顔に変わった
「ルナっ、どこにいってたんですか?探したんですよ」
「ぶっくまんのおじいちゃんの所にご本をかりにいってたの」
ルナと呼ばれる小さな子供は手を離し、少女のもとに駆けて行った
そんな様子を青年はため息を吐きながら眺めていた
「また脱走したのか?」
「ええ、本当に少しでも目を離すといなくなっちゃうんですから。困ったものですよ」
「ちがうもん!おじいちゃんがご本を貸してくれるっていったんだもん!!」
割りこんできたルナは頬を膨らませ、口をとがらせながら言った
そんなルナに二人は苦笑いする
ルナは勤勉家である、何事にも興味を持ち、3歳になって言葉を話す様になったと思ったら質問攻めである
毎日のように「あれはなに?これはなに?」の繰り返しだ
「誰に似たのかな〜、ユウ・・・なわけないですよね」
「どういう意味だ、それは!」
青年が少女の頭を小突けば、彼女はくすくすと笑っている
白くて長い指が彼の手を包むように触れてきた
「おかえりなさい、ユウ」
「・・・ただいま、アレン」
「ほら、ルナも」
少女、アレンがルナの背中をポンっと押せばルナはにこやかに笑って
「おかえり、パパ!!」
これが、二人の幸せの形だった
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