Paraller
□August10
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真夏のあの日
僕は貴方のもとへ駆け出した
≪August10≫
教室には既に彼の姿があった
今は夏休みだが今日は出校日で全学年がそろう日
まだ静かな教室には蝉の鳴き声が響いている
ぽつんと一つ赤く靡くそれがあった
いつも朝早く教室にいる彼には珍しくもない光景だろう
僕は彼より二つ下の学年だが人のいないこの時間ならまだ間に合う
僕は静かに教室に足を踏み入れた
「おはようございます。ラビ」
僕の声に気づき僕の方にゆっくり顔を向ける彼
朝が早いから少し眠そうな目をしていた
「あれ?アレンじゃん。どうしたんさ?また迷子?」
僕にからかうかのように彼は笑っていた
「何言ってんですか!夏までになれば教室までいけますよ!!」
彼は声を出して笑った
僕はそんな明るい彼が大好きだった
幼馴染だから小さい頃から兄弟みたいな関係だった
「それにしても、今日は早いなアレン。いつもこんなに早かったっけ?」
僕はその言葉に少しドキッとした
誰もいないこの時間を狙って走ってまで来たのだから
「あっあのちょっと渡したいものがあったので・・・」
そう言うと彼は自分の席から立ち上がってこっちに歩いてきた
僕の心臓の音がどんどん大きくなっていくのがわかった
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