広い空

□そして目覚めるアゲハ蝶
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「断定した訳じゃない、だけど・・・もしかしたら・・・」


コムイは最後まで言わなかった
だけど、わかる。その言葉の続きが・・・




――アレンはもう、死んでいるかもしれない




ラビはただ呆然とコムイの顔を見つめていた

これほど、絶望的なことがあるだろうか


つい、最近まで隣で笑っていて
つい、最近まで一緒に任務をしていて
つい、最近までその手にぬくもりを感じていた

なのに、今では・・・

隣には誰もいなくて
あの笑顔を見せてくれるものはいない

あのぬくもりでさえ

忘れかけている・・・





『大丈夫』




そう言って、去っていくアレンを止めていれば良かった
無理してでも一緒に行けば良かった

あの時、後回しにしづに、すぐにアレンを抱きしめれば良かった


そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに

今でも、隣で笑っていてくれたかもしれないのに



そんな後悔が何度も何度も繰り返されて


目頭が熱くなって
抑えることができなくて

熱は涙となって翡翠色の瞳から零れ落ちた


「畜生・・・畜生・・・」


ラビの抑えられない気持ちは言葉となり、力が入る拳からは血がにじみ出た


「・・・ラビ、僕はまだ、アレン君が死んだとは思わない」


予想もしない言葉に伏せていた顔をコムイに向けた
その瞳は意志のある真剣なものだ


「あの子は神に愛された子だから、きっと生きてる。僕はそう信じてる」

「・・・コムイ」

「リナリーも、きっと神田君もそう信じてると思うよ。アレン君のことを一番に思ってる君はどうなんだい?」


コムイは柔らなくラビに問いかけた


アレンのことを本当の弟のように可愛がったリナリーも
今でもずっとアレンのことを思い続けている神田も

アレンが生きていると信じ続けている


ラビがもつ、答えは一つ



「もちろん、信じてる。アレンは絶対に生きてる」


さっきまでの、絶望的な目をしたラビはもういない


愛しい子が生きていると信じて待つ、少しの希望を信じて・・・





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