広い空

□色を変えた黒アゲハ
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神田はまだ驚いているようだった、当たり前だろう。
自分の知っているものが敵の隣に立っている
探し続けていたものが目の前にいる


どこからどう見てもアイツなのに、その姿は、今までのアイツじゃないから






「お前も少しは気のきいたことが言えねえのか?初対面の奴にはもう少し印象良くしなきゃ社会でやってけねえぞ?」


まるでふざけているかのような男は少女を見るなりため息をついた
だけど、その言葉に聞く耳を持たないように少女は再びフードをかぶり、整った顔を隠した
見えるのは赤く光った瞳だけ


「・・・っ!テメエ、もやしに何しやがった!!!」


怒りを込めた神田の刀はまっすぐに男の方へ向けられた
あと数mの所で...







スッ





「!?」




男の前にはフードの少女が両腕を開いて自分を盾にしてきたのだ
何の躊躇いもなく入ってきた少女にあと数cmというところで神田は刀を止めた



動けなかったのだ



フードの下から見える赤い瞳には光は灯っていなくて
本当に血の池に飛び込むかのように冷たく濁っていた


少女に気を取られていた神田は気づかなかった

少女の後ろで口元をまるで三日月のように吊り上げていた男の表情に

躊躇いが仇となり横から来た攻撃に対応できなかった
神田はそのまま横に飛ばされてしまった


「ユウっ!!」


やっと出た声でラビは飛ばされた仲間の方を向く
砂煙で上手くはわからない、だが、影が動いたことによって彼が生きていることを確認し
安心する


「戦う気はねえって言ったろ?挨拶だけだよ、挨拶だ・け」


ラビは声のした方を睨みつける
その先には少女の肩を掴み自分の方へ引き寄せている男の姿


無性に腹が経った

アレンが他の男にとられたようで


でも、そこにいるのは本当にアレンか?


そっくりなだけかもしれない、否そっくりで居てほしい


「・・・、あの人生きてる。」

「ん?心配なわけ?」


その問いに首を横に振る


「私には関係ないから・・・」






何にも興味を持たず、全てと無関係のように振る舞う彼女が
これがアレンで居てほしくなかった




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