Basara

□学園BASARAE
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072(長政と)










「……………」

「…長政様」



彼女が心配そうに尋ねてきた。それ程酷い顔をしていたのかもしれない。私は軽く「大丈夫だ」と呟き、鞄を背負い直して玄関に向かう。ドアを開けると眩しい光に目が眩みそうになった





昨日の夜、毎年の如くいきなり市からの「兄様が今から海に行くって…」というメールを見た。そこからすぐ様に準備して、本多忠勝という人物が来る前に織田家に到着しなければならなかった
今まで間に合わずに市と共にお留守番というような形をとっていたのだが、今回は前々から準備をしていたし家に居たので間に合った。別にそこまで行きたい訳ではないが、間に合わなければ私を待ってくれている市もお留守番になってしまうし、なにより義兄上の機嫌を…損なってしまうからだ

しかしそこで見た本多忠勝には驚いた。この前の胆試しのロボットではないか…!!(市に聞いたら市も初めてついていくから知らなかったらしい)しかし感動する余地もなく何故か明智に明智の分の荷物を持たされ、しがみついて飛んで堪えてやっと辿り着いた時にはもうクタクタだった

さっさと割り当てられた部屋に行くと、そこには既に明智が寝ていた。…人に荷物を任せて寝てるとは…何たる悪か!!
しかし疲れて怒る気力も無かった私は荷物を下ろし、自分の布団を敷いて寝た。しかし何故か酷い悪夢を見ては起き悪夢を見ては起きで、結局充分に寝る事が出来なかったのだ



「…奴か?奴が悪夢を見せたのか…?」

「……これも全て…市のせい」

「関係無いだろう。そうやっていつも自分を卑下するな、市」



力無くそう言うと、何故か市は嬉しそうに頷いた










「なんだ?お前も来てたのかよ、浅井」

「こちらの台詞だ、長曾我部」



虫取網と虫取籠を幾つか持ってやってきた能天気そうな男にそう言い返すと「元気ねーなァ、大丈夫かよ」と言われる始末。仲間内に対する気遣いの面だけは正義ではあるのだがな

そう思っていると、他にゾロゾロとやってきた。そして先頭の男…伊達が長曾我部の虫取網を一つひったくり、高々と掲げて叫んだ



「OK!お前等行くぜ、虫取に!!」
『おーっ!!』






















「あっ、あっちにいたぞバカ女!!」

「誰がバカ女だ!!って、あーっ!!お前さんのせいで逃げられちゃっただ!!」



賑やかな小学生の奥では後輩達が何故か団子虫取り合戦をやりはじめたらしく、バケツに投げ入れていた。無理矢理連れてこられたのだろう毛利は、木陰で本を読んでいた





私はというと、虫取には興味が無かったので散歩をする事にした。適度に運動するのは正義だ。私は市を連れて歩き出した

すると滝が近いのか、水音が聞こえてきた。何となく冴えていない頭を醒ますのには丁度良いかもしれない。私は顔を洗おうと思い、近付いた



しかし滝が見えてくると何とそこに…滝の中に人影が見えたのだ










「まだまだじゃ幸村ァァァ!!己が精神全てを研ぎ澄まし、耳を傾け、声を発するのじゃァァァ!!」

「わぶぁりばじだぼ、おぶぁばばざぶぁぁぁあ!!」

「何を言っとるか解らんぞ幸村ァァァ!!」

「二人とも〜、いつまでやってるんですかぁ〜。そろそろお昼ですよ〜」



久しぶりに見るその姿に、顔を洗う前に醒めてしまった



「…おっ…お館様っ!?」

「来たのね…あの人……」



市の本当に小さな呟きは、私には聞こえなかった















(長政と市と元親と政宗と蘭丸といつきと信玄と幸村と佐助)

10.09.07
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