Treasure
□魔法使いに恋をしました
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行方知れずとなっていたルーク一行がバチカルに帰還した日、その夜のことである…。
(ルーク様は…何を考えていらっしゃる?
マルクトこそ我がキムラスカの仇敵。されば、討つべきものであれど、共に在るべき者ではない筈…)
昼間からこの方、随分と落ち着かぬジョゼット・セシル。
そのことばかりが頭を埋め尽くしているのだ。
(しかも、"死霊使い"だと…!)
ジョゼットにとってはそれが一番の悩み事だった。
かつて戦場でまみえし"死霊使い"ジェイド。
ジョゼットの軍が彼率いる部隊に敗北に追い込まれ、退却する際のことだ。
ほんの僅か、風に暴れる長い髪が彼方に見えた。
それの奥に居座る、真紅の瞳も…。
…恐ろしかった。
まるでその目は、鮮血を吸ったかのように感じられたのだ。
(…その"死霊使い"が和平の使者…?
そんなけったいな話がこの世にあるとは)
「…の」
(ルーク様もあのような者共に捕らえられて…おかわいそうに)
「あの?」
(だいたいあの導師一行とやらもマルクトと接触した時点で)
「あの〜!すみません!」
「…っは!?」
どうやら随分呼ばれていたにも関わらず、自分は気付かなかったらしい。
ジョゼット、大いに焦る。