BASARA2

□多生之縁@
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(信幸と)

※捏造キャラ(紹介はこちら→捏造キャラ紹介)
※現パロ















穏やかな陽射しに風が凪ぐ。はらはらと舞い散る桜吹雪。今日は花見日和だ

ポケットを探ると"それ"はここにあった。随分昔の話だから感じる筈はないのだけれど、それでも温もりを感じた気がした



目を閉じて過去を想う。想い出すと広がるは互いに幼い記憶

最初ほど仲が良くて互いを知っている時は無かったかもしれない。兄弟という枠組みに喜びがあって、だからこそ共に歩んできた日々。…故に少しでも歩みが違えば誤差が生じ、いがみ合い、食い違い…そして歩みを違えた

それは兄弟間だけでなく次第に両親や親戚にまで延びていった。…勿論、小さな子供のすれ違いが大人を巻き込んだとは言えないかも知れない。だけれども実際に違え別れ汚く穢れていったのは、そう、確かだったから










「何とも…」



簡単で単純で仕様も無かったのであろう微妙な歪み。直そうと思えば直せたのかもしれないが、それには時間と意地汚い"ほこり"がかかりすぎていた

"成長"とは全てが歓喜するものでは無い。喜びにだけ溢れる言葉、プラスにだけしかならないという言葉はこの世には存在しない。正しいと思っていた言葉に歪みを見付けた時…その時自分は成長する。大人というプライドに



「時間が掛かったんだな…と」



変わらない人間など居ない。大人にならない人間など居ない。どんなに子供染みたピュアな人間だって、大人になる。なってしまう。汚く穢れていく。時間が、交流が、理解が世界を教えてしまう

汚すばかり、それが不完全である人間の性だ










「なのに…」





そんな中に居る筈なのに、










「変わらないモノ…変わらない芯が、あるもんなんだね」










兄さんは変わらなかった



いや、成長していた。純粋であっても世界を知ってきていて、汚れを知ってきていて、心も揺さぶられてきて…汚なく穢れていた。…それでも、芯は揺るがなかった

愚かで汚れた人間の、未知なる可能性を見た…そんな不思議な衝撃。は、言い過ぎかもしれないけど










「そうか…」





隣で寝転がりながら然程興味も無さそうな生返事が来る。裏を返せば、本人はそうではないと言う意思表示



「どういう事?」

「どういう…?…うむ、信幸もそれは変わらず…ではないか?」

「…俺が?……違うよ」



兄さんは何を言っているのだろうか。俺はあの頃の様に素直に純粋な人間ではない。世界を知って、汚れを知って、心も揺さぶられて影響を受けた。なにより芯なんて初めから持ってなんていなかった

ただただ、追い掛けてついていっただけなのだから





「変わらぬよ。優しき漢だ」





それでも…普段は暑苦しいまでに一直線な兄さんが、今は諭す様に優しく笑った。昔とは違って、でも変わらない笑顔だった










目を閉じる。そっと、ポケットを探って"それ"に触れる。あぁ、温もりを感じたのは…懐かしさのせいだったのか。"それ"を握ると、無性に嬉しくなって笑みが零れた


目を開き、ポケットから"それ"を取り出し開く。"それ"は掌に対してもまた小さな巾着袋で、その口を開くと出てきたのは萎れた桜の花びら。それに触れた瞬間、それはパラパラと粉になり、そして風によって流されていってしまった



「…良いのか?何か飛んでいってしまったが…」



記憶に有っても無いであろう兄さんが首を傾げながら訊ねてきた





「うん、もう…要らないからね」










穏やかな陽射しに風が凪ぐ。はらはらと舞い散る桜吹雪。今日は花見日和だ

そっとまた目を閉じてみる。家族皆で最後に居た記憶が視えた。沢山の花吹雪から兄さんはひとつ、花びらを掴む。そして俺に渡す。それが、記憶にある最後の清さだった


それでも羨み蔑まないのは、…昔と同じ大好きな花の香りが今、心を満たしているからなのかもしれない。そう思う事にした



考え続けるのは疲れるね、と

僕が苦笑したら


だろうな、と

隣にいる兄さんが、笑った





そんな穏やかな午後だった















の雨に紛れた君の香り










fin.

(信幸と幸村)

どうしても一人枠が余り、オリキャラ入れました
現代は家庭複雑な真田は兄弟間複雑設定ですが、そのわだかまりが解けてきたらへんを書いてみました。書きたかったので書けて良かったです

13.06.30
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