BASARA2
□相縁奇縁
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(鶴と)
今日こそは、言えるでしょうか
「あぁ…まだでしょうか…」
高鳴る鼓動を抑えながら体を電柱に支えられ、何とか此処にいる私。何故一人で此処にいるのかと言うと、彼が帰り道に此処を通って来るから。ですから私は此処で待ち伏せ…というものをしているのです
しかし、毎度彼の周りには誰かしらの友人がいて一緒に帰っているのです。その為に中々声がかけられなくて、隠れて通り過ぎるのを待ってしまう…。こうして隠れて待っているのがもう何日目でしょうか。もう私の日常と化してしまいそうです
このままではいけない…というのは解ってはいるのですが…
「…っ!!来たっ…!!」
道の向こう側からやってくる人物を見て、また胸の鼓動が高鳴ってくる。そう、待っていた彼が来たのです。私は肩に掛けた鞄を背負い直し、電柱の影に隠れました
今日は家康さんと一緒だった。一緒に帰ってるといっても家康さんが一方的に話しているだけで、彼は無視したり相槌を打ったり無視したり一言言ったり無視したり…相変わらずな淡白さんといった形でした
「…もしも、」
私が声を掛けられたとして、彼は気に留めてくれるでしょうか?もしかしたら淡白さんな彼はそのまま通り過ぎてしまうかもしれません。いいえ、きっと気付いてくれます。気を持つのです、伊予河野鶴!!
でなければ…寂しいですから
えっと、それで気付いてくれて…何を話そう。あの家康さんでさえ会話があまり成立していない気がしますし、そしたら私はもっと出来ないのではないのでしょうか?私と彼はそんなに会話をする仲でもないし…。ううっ…何だか寂しい…
そんな事を考えている内にどんどんと足音が近付いてきていた。家康さんの話し声が聞こえてくる
何ででしょう、先程までは会いたいと思っていたのに、今は会いたくなくなってしまっている
会いたくない
会いたくない
でも会いたい
会いたいです
会いたいのです
会いたい…
「伊予河野」
………………………?
今、誰か私の苗字を…
「聞こえないのか?貴様だ…伊予河野」
電柱の向こう側から聞こえる淡々とした声。間違いない、彼だ
「えっ…えへへへへ…。バレちゃいました…」
「何だ、鶴姫か。よく解ったな、三成」
「よくそこにいるからな。何をしているかは知らんが…」
さして興味も無さそうにそう言う彼にめげそうになるも、負けはしません!声を掛けられた、それだけで奇跡に近いのです…!!しかもいつも私の存在を認知していた…!!先程の鬱な気分など全て雲の上までビューんと飛んでいってしまいました!
そうです!今こそ…言うべきなのですよね…!!このチャンスをモノにしなければっ…!!
「いっ…石田さんっ…!!」
「何だ」
彼が私を見る。緊張して言葉が、声が出ない。あれ?私は何を言おうとしたのでしょうか?えーっと、えーっと……
すると彼は待つのをやめて、目線を一瞬だけ左上にそらしたかと思うとまた私を見て、そして私に向かって白く細い指が揃った手を差し出してきた
彼はじっ、と私を見て…待っている
こっ、これはもしや………
「そういえばこの前貸した辞書「よっ、宜しくお願いします!!」
彼が気を変えない内に、
私はその手をとり、強く握った
「すっ、好きです…!!」
君をずっと待ってたの
fin.
(鶴姫と三成と家康)
この後に権現がボケをかましたら失敗します←
初の三鶴作品がこれっ…orz
10.10.12