Basara

□学園BASARAE
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068(幸村と)










―――海行こうぜ、海!!



別に海に行くのが初めてと言う訳ではない。それでも心踊るのはただひどく懐かしくて、彼等と皆で行くのが嬉しいだけだ










「嬉しそうだね、旦那」

「そうか?」



そんなに出ているのだろうか。団扇を扇ぎながら気だるそうにしている佐助にそう言われ、首を傾げる。「だって口元緩んでるし」と口元を緩めながら追加して言われたら、もう何も言い返せない



「そういえばさ、お館様には話したよね?」



その佐助の言葉を聞いて俺は勿論、と言おうとして止まった。何せあの伝達が夜中だった為に、早くに眠られたお館様を起こしてはならないと思い、すぐに言いに行くことが出来なかったのだ

翌日に言おうとしたのだが…、どうやら朝の殴り合いにてその記憶が吹き飛んでいたようだ。さすがはお館様だ



「…その様子じゃ、言ってないのか。俺様てっきり旦那が既に言ってるもんかと「ぬぉぉお!!お館様に伝えていないとはなんたる失態!!すぐにでも伝えねばぁぁぁ!!ぅお館さばあぁぁぁ!!」



あの伝達が来て既に一週間は経過している。俺は急ぎ、お館様の元へ走った




















お館様は黙って聞いていらっしゃった。俺はただただ頭を下げながら、一週間前の携帯の伝達事項を述べた



「申し訳ありませぬお館様!!長期外出を願いたいと思っておりますというのにこの幸村、お館様に話を通す事を忘れるとはなんたる失態を…!!叱って下されお館さ「黙れ幸村ァァァ!!」



お館様の怒声と共に繰り出された拳により、俺は障子を突き破り庭まで吹き飛ばされた



「…えと、お館様…俺も報告してないのは同じですから、旦那だけを責めないでいただけると…(でも拳は勘弁…)」



後からこっそりやって来たのだろう佐助が静まった中でそう呟く。俺は起き上がり鼻血を拭い、埃を叩いていると、お館様は佐助に向きこう言った



「佐助、ワシは別に怒ってなどおらん。ただ幸村がうるさかったから止めただけよ」

「………………………」



佐助が何故か何とも言えぬ様な顔をしていた。そうでございましたかお館様!!しかし、そうならそうとおっしゃって下されば宜しかったのに…



「ふむ…、幸村…そして佐助よ。お主等はそれに行きたいと言うのだな」



急にお館様がこちらを向いて話を再開しだしたが故に、一瞬何の話をしていたかを忘れそうになったが思い出し、頷く。佐助も「折角ですから」と言って頷いた

お館様は佐助を見、そして俺を見て力強く頷かれた。何とも不思議だった。その時のお館様の顔は先に死んだ父を想わされたからだ



お館様は口を開き、こう言った










「海に行く許可は与えん」





衝撃を与えられたお館様のお言葉は、その後佐助と俺に予想外の展開をお与えになられるのだった










(幸村と佐助と信玄)

10.09.03
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