いちご†盗人

□9、Like a mystery.
5ページ/21ページ



 電話は、董胡から叶への緊急連絡だった。

 明日のスポーツ新聞にナツの熱愛記事が掲載されるから、外出を控えろ、という例の。

 それを聞いて、叶は酷くショックを受けた様子で頭を抱えてしまった。

 裸の上半身にはバランスよく筋肉がついているものの、肖衛よりは幾分細くてたよりない。


「兄ちゃんにどう詫びたらいいんだよ。ナツのこと、護るように言われてたのに……っ」


 君に気をとられていた所為だ、と理不尽に責められても、否定する気はおきない。

 だって―― さっき、震えている様子に気付いてしまったから。


「真人に……真人さんに頼まれてたの? 肖衛のこと」

「そうだよ、悪いかよっ」

「ううん」


 なんだか、弟を思い出してしまう。

 あのときの奏汰も、必死で泣くのを我慢してかすかに震えていたっけ。


「“兄ちゃん”のこと、本当に大切に思ってるんだね」


 必死だったんだろうな、なんて言ったら、未知にはまた小突かれそうだけど。

 重なってしまう。その、懸命さが。


「これからも護ってあげてね、肖衛のこと。叶みたいな仲間がいてくれたら、安心だよ」


 言うと、叶は意外そうに目を丸くした。「アンタ、ナツのこと」遮るように、私は尋ねる。


「……ねえ、真人さんはいいおにいさんだった?」


 これ以上肖衛のことを考えていたら、泣いてしまいそうで。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ