いちご†盗人

□#An extra entertainment. 2
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 事務所はまだまだ自転車操業で、給料は前職より八万も下がったし、経費節減のためにこんな猛暑でもクーラーが二十六度設定だったりするけど、一向にかまわない。

 董胡のためだと思えば全然イケる。

 いやむしろ、ライブチケットがタダで手に入るようになったぶん、なんぼお得かわからないって話よ。


「さて、そろそろ午後の仕事を再開するかね」

「え、もう? 休憩、まだ十五分あるよ」

「上司が留守のときほど働いておくもんだよ、下っ端ってのはさ」


 意気揚々と弁当箱を片付けるあたしを見、芹生は感心したように息を吐く。


「未知ってほんと、外見に似合わず真面目だよねぇ」


 またもや一言余計だ。悪気はないんだろうけどさ。

 なんて、零したい愚痴をこらえてパソコンの前に座ったら、事務室のドアが大開きになった。

 ビビって、あやうく姿勢がエビ反りになりかけた。


「おう、なんだ、美鈴はいねえのか」


 部屋いっぱいに響いたのは、低すぎるのに嫌みじゃない、シブくて怠い声。

 振り向いたあたしはそこに、憧れのギタリストの姿を見た。


「と、董胡さんッ」

「よ、未知。と、芹生ちゃんも来てたんだな」


 桟に引っ掛けた右手の指をひらひらさせて、とびきり甘い笑顔をくれるもんだから、卒倒するかと思った。

 本日も、あたしにとって彼は全人類の頂点に君臨するキングオブ美形だ。
 
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