いちご†盗人
□#An extra entertainment. 2
5ページ/21ページ
事務所はまだまだ自転車操業で、給料は前職より八万も下がったし、経費節減のためにこんな猛暑でもクーラーが二十六度設定だったりするけど、一向にかまわない。
董胡のためだと思えば全然イケる。
いやむしろ、ライブチケットがタダで手に入るようになったぶん、なんぼお得かわからないって話よ。
「さて、そろそろ午後の仕事を再開するかね」
「え、もう? 休憩、まだ十五分あるよ」
「上司が留守のときほど働いておくもんだよ、下っ端ってのはさ」
意気揚々と弁当箱を片付けるあたしを見、芹生は感心したように息を吐く。
「未知ってほんと、外見に似合わず真面目だよねぇ」
またもや一言余計だ。悪気はないんだろうけどさ。
なんて、零したい愚痴をこらえてパソコンの前に座ったら、事務室のドアが大開きになった。
ビビって、あやうく姿勢がエビ反りになりかけた。
「おう、なんだ、美鈴はいねえのか」
部屋いっぱいに響いたのは、低すぎるのに嫌みじゃない、シブくて怠い声。
振り向いたあたしはそこに、憧れのギタリストの姿を見た。
「と、董胡さんッ」
「よ、未知。と、芹生ちゃんも来てたんだな」
桟に引っ掛けた右手の指をひらひらさせて、とびきり甘い笑顔をくれるもんだから、卒倒するかと思った。
本日も、あたしにとって彼は全人類の頂点に君臨するキングオブ美形だ。