いちご†盗人
□#An extra entertainment. 2
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「仕事はやっていけそうか?」
ふたりきりになった事務室。
お腹が鳴ったらどうするよ、なんて心配していたら、董胡がソファーに腰を下ろしながら言った。
「何かと雑務が多くて面倒だろ。美鈴は人使いが荒いし。嫌になってねェか」
「い、いや、そんなことは」
「そうか、ならよかった。俺ら、役職なんて名前ばっかりで楽器鳴らすくらいしか出来ねえもんな。ほんと、助かるわ。これからも頼むな」
「は、は、はいッ――」
なんて勿体ないお言葉。
芹生も前に言っていたけど、董胡はものすごく律儀な人だ。
これだけ外見が整っていて、尚且つ気配りもできるなんて非の打ち所がないどころか神の領域だよ。
なのに独身とか、嘘なんじゃないの。
あたしが奥さんに立候補したいくらい。相手にされないのがオチだろうけどさ。
横目で覗き見ると、董胡は暑いのか、少し長めの黒髪を上半分だけ括っていて、のぞくうなじがこれまたセクシーだった。たまらん。
と、ふいに振り返った彼と目が合ってしまう。心臓、止まるかと思った。
「ああそうだ、未知、これやるよ」
董胡は腰を浮かせてポケットを探ると、「ほら」小さな紙の小袋を差し出した。
「あ、あたしにッスか」
思わず自分を指差してしまう。マジで?
追っかけ時代、出待ちのたびに何かを――手作りのリストバンドとかを――渡してきたけど、逆に何かを貰うなんて初めてだ。
おっかなびっくり受け取ると、中から出てきたのはガラス玉を繋げたケータイストラップだった。