いちご†盗人
□#An extra entertainment. 2
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「すげ、綺麗……」
「だろ。未知はそういうの、好きだろうと思ってな」
蛍光灯にかざすと一粒一粒がキラキラと光を透過して、宝石みたいに見える。
こういうの、光り物好きのあたしにはたまらないんだ。
だけど、ひとつ引っ掛かるのは、それが紫色だったこと。
やっぱり董胡から見ても、あたしにはオカンのアフロ色がお似合いなのか。なんて。
こんなに素敵なモノを貰っておいて失礼だけど、なんだかがっかりしてしまった。
すると、董胡は得意げに笑って、胸ポケットから携帯電話をひょいと覗かせる。
「俺とお揃いだ」
そこに揺れていたのは、あたしの手の中のものと、まるきり同じストラップ。
まさにズキュンと、胸のど真ん中を打ち抜かれた気分だった。
やばい。董胡とペアだとか。ていうか、どうしてあたしと!?
「あとこれ、貰い物で悪いが良かったら使ってくれ。ベタな恋愛映画のチケットなんだが――」
あたしは完全に余裕をなくしていた。舞い込んだデカすぎる幸運に、すっかり我を失っていたのだ。
だから、差し出されたそれを前に、うっかり思い切ったことを――
「それっ、い、一緒に行きませんかッ」
言ってしまったのだ。すぐに後悔したけど。
彼みたいなスターが自分のような小娘を相手にするわけ、ないじゃないかって。
しかし予想に反して、董胡は「おう」軽い口調で了承してくれて。
「別に俺は構わねえけど、芹生ちゃんはいいのか? 放っておいて」
「もももちろんです! あの子にはちゃんと、デートに連れてってくれる旦那がいますしっ」
「だな。じゃあ未知は俺がデートに連れてってやるとするか。おし、来週の日曜、事務所の前で待ち合わせだ」
「は、はいッ」
足の裏が三センチくらい、床から浮いてるんじゃなかろうかと思った。