いちご†盗人
□#An extra entertainment. 2
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春がやってきた――と思った。
去ったばかりの春が、振り返って猛ダッシュして戻ってきた、みたいな。
自分でも、惚れっぽいタチだと思う。
初恋は保育園の頃だから、生まれもっての性質なのだろう。
あたしは小学生のときから、ほとんど途切れる事無く恋をしていた。
あだ名は王子だったし、もっぱら男役として女子に告白される側だったけど、それでも。
ちなみに、コクってくるのは大概、親友だと思っていた子だった。
あたしも女だからね、なんてわかりきったことを諭しても、泣かれるのがお決まりだったっけ。
本当は、あたしのほうが泣きたかったんだけど。
そんなに男っぽく見えるかよ、って。
なのに、彼女らは決まって自分こそが世界一の悲劇のヒロインだ――なんて顔をして縋ってくるから、こっちは冷静でいるしかなかった。
――どうして。どうしてわたしじゃだめなの未知――。
そうじゃない。状況的に無理だろって言ってるんだ。どうしてわかってくれないんだ。
ほんとうはわかっているくせに。
あれこそ、卑怯の極みだとあたしは思う。
(だからかね、女っぽい女になれないの)
多分、あたしは心のどこかで、ああいう行為に嫌悪を抱いているのだ。
自分だけが不幸みたいな顔をして、他人の不幸が見えなくなるような、見境のない恋に。
あたしが姫になり損なっているのはそれも原因の一端だと思う。
ヒロインってのはだいたいみんな、そういう女っぽい女ばかりだからね。
なんてぼんやり回想しながら、早速取り付けたストラップを顔の前にかざす。
イメチェンする目的、変わったかもなあと思った。
(董胡って、紫色、好きなのかな……)
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