いちご†盗人
□8、Love is blind.
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例のライブ騒動から一週間。
本日は未知がめでたくクアイエットゾーンの一員と相成る日。
私はそんな親友を激励しに行こうと、重箱弁当を抱えて電車に揺られていた。
電車は好きだ。
睡魔を誘い出すノックみたいな震動が心地いいし、満員でなければ大勢のひとと乗り合わせるのも、一期一会って感じがして嫌いじゃない。
けれども。
以前美鈴さんが言っていたように、事務所への交通の便はお世辞にもいいとは言い難かったりする。
最寄り駅には準急も快速も止まらないし、鈍行がやってくるのは一時間に数本だけという、都会にあるまじき空白だらけの時刻表は、そりゃ見事なものだ。
これがテストの解答用紙なら、赤がつくとまではいかなくとも追試はまぬがれない、ってくらい。
で。
未知はこれを機に免許取得を目指すと言って教習所に通い始めた。正しい判断だ。
運動神経と体力を母の胎内に置き忘れてきた私は、取り残されるのが目に見えている気がして、現在様子見にとどまっているのだけれど……。
これも、個人的には正しい判断としたいところ。
だって肖衛にお金出して、とはいいにくいし。決して安い金額じゃあないし。
もし奇跡が起きて取得に至ったとしても、車なんて買えないし。
まあ、そのうち。
そのうち、なんとかなるかな。うん。
得意のホジティブシンキングで締めにかかったら、ポケットの中で携帯電話が震えた。