いちご†盗人
□11、Keep the truth a secret.
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◆introduction……
蝶番のようなものを想像する。
決して特殊なやつじゃあない。ごくありふれた、一般的な二枚羽の蝶番だ。
どこのお宅にも必ずひとつはあって、例えばドアの付け根なんかにつけられていたりする、あれ。
大方の場合、それらには軸があって、ふたつの羽をとめるようにピンが入っている。それを中心にして、羽はとてもスムーズに回転する。
で、だ。
ここに、ふたつある羽のうち、片方を肖衛と仮定してみる。もちろん、いや、やや不本意ながらもう一方は私だ。
軸はきちんと噛み合っている。そこには、ピンが一本揺るがぬように差し込まれている。
だから私達は離れない。
それは互いへの気持ちだとか、性格の一致だとかいう抽象的なものを示しているのではなくて――。
誰もがそれと認めるような、とてもわかりやすいもの。
それが、私達の間にひとつの支点をつくり、繋いでいる。そう思っていた。
だから私は、彼との絆を信じて疑わなかった。それがあるからこそ私達ははじまり、また、続いていくんだって。
しかし、私は気付いてしまった。皮肉にも親友の手によって、気付かされてしまった。
あのとき風邪をひきさえしなければ、私はその先も彼を疑わず、ピンを信じて回れたのだろうか。蝶番は機能し続けたのだろうか。
答えはノー、のような気がする。
いつかはきっと、軸はブレた。分解は、免れなかった。
だってそこには、ピンなんて最初から入っていなかったのだから。