いちご†盗人

□13、If the shoe fits, wear it.
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 許せって言われても――。


(どうやって許したらいいんだ)


 あれから二時間、私は頭を抱えたまま桂木家のソファーで悶えていた。それ以上、どうにも身動きが取れなかった。

 肖衛はとっくに自宅へひきかえしたし、未知は現在夕食の準備にとりかかっている。だから動いていないのは私だけだ。

 今晩はこのまま、桂木家離れの客間を宿として提供してもらうことになっている。だからひとまず肖衛とは、明日まで顔を合わせなくて済む。

 でも、それで気が楽になったかといえばそんなこともない。

 だって、まず、事態が呑み込めない。

 見殺しにしたとか言われても、ドラマか漫画の中の台詞みたいでピンと来ないのは、私の記憶が現実と違って美しすぎるからというのも理由のひとつだろう。

 かといって、正しい記憶を取り戻したいかと言うと……このままのほうが断然いいと思ってしまう。これからの自分自身のために。

 よしんばそれを私が願ったとして、そんなにタイミング良く頭の中が補正されるわけはないだろうし。

 元々古い出来事であるからして、この先時間が解決してくれるとも考え難い。

 何日もここにご厄介になっているのは心苦しいから、早くなんとかしなきゃとは思うけれど――。

 これまでいろんな出来事をなあなあにしてやり過ごしてきた私には、許す、がどんなことなのか、見当もつかなかった。

 美鈴さんに『甘い』って言われた理由、今になってやっと、身にしみてわかった気がする。


「芹生、メシ食える?」


 トレーを片手に襖を開けたのは未知だった。

 慌てて駆け寄って、それを受け取る。形の良いオムライスは、彼女の得意料理だ。

 学生時代にも何度かごちそうしてもらったっけ。懐かしいな。
 
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