いちご†盗人
□14、What shall I do?
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「芹生、早く行こうぜ、あっち!」
「え、ちょ、まっ……」
はしゃいだ様子で手を引く初穂を、私は逆から引っ張って留める。繋がれて一本になっていた腕は弦のように張って、一瞬後に緩んだ。
「なんだよ突然。どうした?」
どうしたも何も。
振り返った彼は涼しい顔をしているけれど、私は肩で息をするので精一杯で、とても返事が出来る状態じゃあない。
挙げ句、貧血なのか目眩までしてきて、やむなくベンチに腰を下ろした。
駅から遊園地の入り口まで、すでに一キロは走り続けているというのに、何故この人はこんなに飄々としていられるのだろう。
「もしかして嫌だった? 俺とのデート」
「う、ううん、そ、そんなことな、たのっ、たのしい、よっ」
強がってみても、上がった息が限界を暗に主張している。
自分に体力がないことは自覚済みだ。
在学中は体力測定のたびに真面目にやれとしかられたし(私は毎回真剣だ)、マラソンだって毎年脇腹の痛みにやられて途中棄権してきた。そんな輝かしくもない過去を思うと軽く落ち込む。
でも、言い訳をさせてもらえるなら、肉体的なハンデとまではいかないまでもそれに近いものを私は抱えているのだから仕方がない。
胸だ。
これが邪魔をして上手く走れないことは、プロのマラソンランナーと比較して考えて頂ければ一目瞭然だろう。
なりたくてなったわけじゃない。こればっかりは私自身に非なんてない。
だから叱られるいわれもないはずなのだ、本当は。
基礎体力がないという点は、指摘されると痛い部分なのだけれど。