いちご†盗人
□15、All along.
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「もしもし、肖衛、いまどこ!?」
『え、セリ? どこってそりゃ、自宅だけど』
「わかった、そこで待ってて。今すぐ行くから」
『ど、どうしたの急に』
「着いてから説明する!」
タクシーに乗るのは気が引けたから、私は未知の自転車を無断拝借し、駅へと急いだ。
直線距離にすれば1.5キロ、死にものぐるいで飛ばせば10分程度で着けるはずだ。
しかし気が動転していたせいか、重要なことに気づいたのは駅までの距離を半分消化してからのこと。
ちょっと待てよ、タクシーの運賃より自転車本体の代金のほうがよほど高くつくのでは。
一気に青ざめたけれど、アトノマツリというやつだ。
いや、これは過去三年間、未知が通学のために酷使したもので、ゆえに資産としてはすでに価値が下がっているものと――思いたい。
(本当にごめん未知!)
申し訳なさをカロリーとして消費するつもりで、残りの半分を漕ぎきる。
ほうほうの体でホームへ駆け込むと、タイミングよく電車が滑り込んできた。
急行だ。乗り込んで、ほっと胸を撫で下ろす。
初穂は先程のあの音からして恐らく車だろうし、飛ばしたなら既に未知の家には到着しているだろうけれど、急行に乗ってしまえばもう追いつけないはずだ。