いちご†盗人
□17、Stay with you.
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私にとって『許す』は『許容』と解釈するのが一番しっくりくる気がした。
言い換えただけで、本質にさほど違いはないのだけれど。
でも、辞書で見た『免ずる』よりはずっと簡単に実行できると思った。
記憶にない十三年前の出来事も、肖衛を名乗る夏肖のことも、結婚出来ないことも――とにかく全部を受け入れるのだ。
彼の中にくすぶる少年のままの本音に触れたら、私の中の母性がそれを可能にした。
母性だ。そうとしか言いようがない。
それくらい、この衝動は絶対的だった。
好きだからとか、愛しているから、なんて言葉では到底及ばない。これは恋愛よりもっと生命に近い部分に直結している。
それでいて、単なる欲求とは対極にあるような気もして――だから、母性、としか。
そうだなあ。
体力もないし知力もない私だけれど、これだけは長年の経験で培ってこれたのかもしれない。
前向きに考えれば、これでこそあの家庭で育った甲斐があったってものだ。
それとも、これは女なら誰しもが持っている感情なんだろうか。
そんなことを考えながら、眠ってしまった彼をあやすように一晩中腕に抱いていた。生まれたばかりの弟を抱っこしたときよりも、ずっとずっと脆くて愛おしいと思った。
問題は山積みだ。
けれど、この先は決して彼の側を離れないでいよう。私がこの人を支えていこう。
そう誓った。
なのに。
「さあ、帰ろう芹生」
「お、お父さんっ――」
抗議する間もなかった。