いちご†盗人

□#An extra entertainment. 3
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 そこで彼女は身震いしつつ、深いブルーのドレスを翻し去っていったのだった。

 残された俺はもういちどため息。そしてさらに落ち込みを深くする。

 脳裏に蘇るのは、昨日の会話だ。


『未生は本当にピアノが好きだなあ。将来はパパみたいに音楽をつくる人になるかい?』

『ならないよ』

『どうして。未生なら素質もあるし、可愛いし、きっと人気者になれるよ』

『だってパパのおんがく、ヤバンだってじぃじがいってた』

『や、やば……ん……!?』


 あのときは本当に、頭蓋骨にヒビでも入ったんじゃないかというくらいの衝撃を受けた。

 思い出すだに悶絶してしまう。

 そりゃ、ロックが上品だとはお世辞にも言えなかろう。言えなかろうが、あんな幼くて可愛らしい子に野蛮だとかいう概念を植え付けるってどうなんだ。

 どうなんですかお義父さん。

 とはいえ――表立った反論など、俺には到底出来ないのだけれど。

 そうだ、例え正当な理由があったとしても、義父にたてつくなんてもってのほかなのだ。


『お嬢さんを僕にください』


 そう頭を下げに行った日、


『君、娘を孕ませたそうだね』


 一言で追い返された身としては。

 義弟――奏汰くんは引き摺ってでも家族全員を連れてくると言ってくれているが、不安だ。

 教会式、この調子で大丈夫なんだろうか……。
 
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