いちご†盗人

□#An extra entertainment. 3
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 すっかり起き上がる力をなくした俺は、そのまま仰向けに転げて目を閉じた。寝よう。寝てしまおう。

 と、先程美鈴さんの出て行ったドアが何の予告もなしに大開きになる。


「お父さんっ」


 投げられたのはまだ若い少年の声だ。俺は目を開けない。開けてやらない。


「うわあ。お父さん、やっぱりそういう細身の衣装、すっごく似合うね! お父さん」

「おとうさんおとうさん連呼しないで貰えるかなあ、俺は君の父親でも白い犬でもないんだよ、ってこれ昨日も言ったよね、叶」

「時間の問題じゃないか。僕、未生ちゃんの婿養子になるんだし」


 彼はととと、っとかけてくると、ソファーの横に置いてあったオットマンに腰を下ろした。俺はそれを、片目で確認。


「あのさ叶、俺とセリを実の親のように慕ってくれるのは嬉しいよ、でも未生に婿だとかそういうのはまだ早いだろ、ってこれも昨日言ったよね。それに」


 何事も本人の意思が大切だからね、とたしなめるように付け加えると、叶は得意げに胸を張った。


「それなら心配ないよっ、僕、未生ちゃんから結婚したいって言われたんだし」

「な、何だって。そんなこと、聞いてない」

「だって言ってないもん。あのね、未生ちゃん、シヴィールの中では叶くんが一番カッコいいって。だからお嫁さんになりたいって。でね、さっき、ほっぺにチューまでもらっちゃったんだ!」


 俺は絶句する。キス……だと……。


「マメにおやつを持って訪問した甲斐があったってもんだよね。インプリンティング成功っ」

「か……叶……? 未生はまだ三歳だからね……?」

「それが何? ナツが僕と同じ年齢のとき、セリちゃんがいくつだったか計算してみたことないの?」


 ちくしょう痛すぎるところを見事についてくれる。
 
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