いちご†盗人
□8、Love is blind.
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まずい、留守電にしないと。私は慌てて右の手で膝の上の重箱を押さえ、反対の手で震源地をさぐる。
しかし画面を確認した途端、思わず動きを止めた。
ディスプレイにはメールの受信を告げるメッセージ。差出人の欄には例の――
例の彼を示す、フリーメールのアドレスが表示されていたから。
《やっぱり利用する気だったんだね。それならこっちにも考えがあるよ》
これまでとは明らかに雰囲気の違う文面に、私は内容を解釈しかねて眉をひそめる。
どういう意味だろう。利用、考え……。
しかし同じメールが続けざまに三通届いたことで、ようやく危機感に火がついた。
これ、放置したらまずいことになるんじゃないの。
今まで彼からメッセージが届くことを事実上黙認していたのは、あちらの意図がわからなかったからだ。
単に懐かしんでいるだけなのか、それとも訴えたいことがあるのか。
ううん。私が勝手に、前者と思いたかったからかもしれない。
しかしここまでくると、後者としか考えようがなかった。しかも、うっすらと感じられるのは私への嫌悪感。
何故。
……いや、ここまでの彼の言葉からして――、
結婚の約束をしていながら、私が別の男と結婚したから、なのかな。
だとしたら、ちゃんと会って話したいと思った。
それには、肖衛には悟られないほうがいい。
だって、もし私が原因でシヴィールに亀裂が入ってしまったら困る。
向こうだってそう思っているから、表立って接触しては来ないのだろうし。
(まずは、どうにかして彼の正体を確かめなきゃ……)