いちご†盗人
□9、Like a mystery.
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割れるような頭の痛みに、私は呻きながら体を起こす。お弁当の準備をしなきゃ。
「……む……?」
しかし、薄くひらいた瞼の間から見えたのは黒っぽい空間で、真っ先におかしいなと思った。
いつもなら森林みたいな、グリーンの壁紙と木目の家具が目に入るはずなのに。
肖衛の寝室、じゃない。どこだろう、ここ。
見慣れぬ部屋をぐるり眺める。
黒いスチール製の家具は、恐らく単身者用のもの。それも、男性向けの。もちろん見覚えなんかない。
なんで?
すると、背後から聞いたことのある声が響いた。
「おはよう、せいなちゃん」
飛び上がって振り返ると、そこには一枚の扉。
どうやら声はその向こうから聞こえているようだった。
「いや、こんばんは、かな。今、真夜中だし」
真夜中?
ああそうだ。ようやく思い出した。私は彼にさらわれたのだ。
となると、この部屋の外にいるのは――。
恐る恐る、ドアノブに手をかける。動かない。
「残念。君が条件を呑んでくれるまで解放は出来ないよ」
「条件?」
つまり私は現在監禁中なのだろう。思わず体が強張る。
「そう。身に覚え、あるでしょ。もうわかってるかな、僕の言いたいこと」
まだ若い、幼さの残る声。
流石にピンと来るものがあった。私の記憶が確かなら、この声の主は。
「か、叶……?」