いちご†盗人
□#An extra entertainment.
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「どうしてそんなに欲しがるんだよ。今ので充分こなせてるじゃないか」
「だって時々壊れるじゃん。修理、出しても壊れるじゃん。あれ、絶対に初期不良だと思う」
「なら、まるごと交換してもらったらいいじゃない」
俺は眼鏡を持ち上げて、手元の書類を捲る。エフェクターの買い替え申請は今に始まったことじゃない。
あれは確かにもうポンコツだ。デビュー前から使っているし、搬入であちこちぶつけたし。
しかし、不具合の一番の原因は董胡の扱いが荒いからだと思う。
機械類は主に董胡が弄るのだ。それも、必要もなく弄る。煙草を切らしたときに、主に。
苛々解消のための内職なのかもしれない。困ったものだ。
「買ったほうが絶対早いってー」
「はいはい、今度ね」
適当にいなしてノートパソコンを開けば、初穂はじっとりした視線をこちらに向けてきた。
「なんだよ。芹生のこと、俺がくれっていったの、まだ根に持ってんの」
何を言うかと思えば。
「もってないよ」
「クソ、なんだよ、籍が入ってるからって余裕シャクヤクかよ」
「しゃくしゃくって言いたいのかな」
「るせっ、釈由美子は細すぎて好みじゃねえんだよ。俺はな、もっとこう、むちっとした感じが」
「誰もそんなこと聞いてないよ」
俺は苦笑してうなだれた。だめだ、仕事の内容がさっぱり頭に入って来ない。