いちご†盗人
□#An extra entertainment.
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「今日だってはいさい弁当を自慢げに食べやがってよ」
「愛妻だよ。愛妻弁当。沖縄の挨拶じゃないんだから」
「愛を強調するなっ。ミートボールはなあ、マヨネーズが合うんだぞ」
初穂はちょっと変わっている。
真面目におかしいことを言う。だからMCではあまり喋らせないようにしている。
この本性を知ったら、ファンが引きそうで怖いし。
最初に会った時から俺は初穂を、黙っていれば美形なのにと残念に思っている。
「……仕事の邪魔だから出てってくれないかな」
貴重な時間を無駄にしてしまった。大きくため息をついたら、コンコンと乾いたノック音が響いた。
「社長、少々お時間よろしいでしょうか」
柳だ。「うん、入って」
俺はすぐさま返事をして、ドアが開いた瞬間、入れ違いで初穂を廊下に蹴り出した。
「向こう三年は入って来なくていいよ」
「なっ、この、横暴社長っ」
叫ぶ彼に一瞥をくれて扉を閉め、念のため施錠をする。これで邪魔者はひとまず片付いたかな。
胸を撫で下ろして振り返ると、柳が穏やかに微笑みながら紙の束を差し出していた。
「お疲れさまです。こちら、先日の物流の件です」
「ありがとう。……ああ、柳といると安心するな」
柳は光栄です、と言って笑う。品のある笑顔だ。