Peewee
□忘れ花、咲う
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創造の原動力は何かと問われたら、懐かしさだ、と僕は答えるだろう。
時を経れば、実物の色は褪せる。形状は着実に失われていく。
しかしそういった変化とは真逆の道筋を辿るものこそ懐かしさなのだと僕は思う。
一度目にしたものを再び目にする、もしくは心に蘇らせるとき―― 人は、最初の印象の上に新たな印象を重ね付けする。
同時に、感情のフィルターを被せる。よって、結果的に対象の輪郭は濃くなる。
そうして、より鮮やかに記憶に残す行為。
何度も。何度でも、摩耗する事無くその上書きは続けられる。
毎回。毎回、存在を厚くしながら。ゆえに。
懐かしい、に勝る感情はない。それこそが僕に想像力を与えてくれる。常々、そう考えていた。
神保克之(じんぼかつゆき)、それは今年三十一になる僕の名でありながら、世間の評価を示すものでもある。
僕は僕の名を忘れたことは無い。
だから世間の評価を、忘れたことも無い。