Peewee

□星祭、雨宿り
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 年に一度の逢瀬とくれば七月七日の七夕で、七夕といえば十中八九雨が降ることは言わずと知れた常識だ。

 個人的には、夏と言うより梅雨の風物詩だと思う。

 今年の七夕―― つまり本日も案の定、朝からぐずついた空模様で、雨あしが強まったのは午後四時を過ぎた頃だった。

 運動靴を濡らしたくなくて商店街に入ったら、眼鏡屋さんの前に笹飾りを見つけた。

 湿気で萎れた五色の短冊が気の毒だった。


(今年も織姫と彦星は逢えないだろうな)


 この時期の雨は苦手だ。蒸し暑くて、これから訪れる夏をじわじわと予感させる。

 真夏に降る雨なら、打ち水よりてきめんに涼がとれるのに。ああ、それはもしかして秋を予感させているからだろうか。

 つまり、雨が季節を連れてくるということか。

 ふとそんなことを考えて、何かのキャッチコピーみたいだなと思った。

 アーケードを抜けたところで湿った夜空に傘を開くと、右のポケットで携帯電話が震えた。


《お仕事お疲れさまです(∧_∧)》


 本宮さん……いや、いつかちゃんからだ。
 
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