壬生狼
□第三幕
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チュン、チュチュン…
早朝、ひかりが窓を開け放っていると一羽の鳥が入ってきた。
その鳥は窓辺に腰掛けていたひかりの指にぴたりと止まり鳴き声を奏でる。
『君、可愛いね。』
“ヒバードには適わないけど”とひかりが呟くと鳥は飛び立ってしまった。
それはひかりの言葉にショックを受けたからか今からひかりの部屋に現れる人物を恐れたからか…。
コンコン…
『…入っていいよ。』
そして入ってきたのは神田だった。
神「コムイが呼んでる、行くぞ。」
『嫌だね。僕は群れたくないんだ。』
神「な、」
ひかりの即答に神田は表情筋がピクつくのを感じた。
神「てめぇのイノセンスのシンクロ率を調べに行くんだよ。誰の所為で俺がこんな所に来たと思ってやがる。」
『コムイ・リーの所為。』
ひかりに図星を突かれた神田はブチ切れ掛けたが、そんな事をすれば後々面倒な事になる。
何せひかりは戦闘狂なのだから。
観念した神田はひかりの腕を引いてズカズカとコムイの所へ足を運ぶ。
──…
『…ちょ、放しなよ。僕に馴々しく触れるなんて…。君、咬み殺されたいの?』
神「…。」
ひかりが非難の声を上げるが神田は全て無視。
『僕を無視するなんていい度胸だね。咬み殺してあげるよ。』
ひかりは掴まれていない方の手で小太刀を握って神田に振り下ろす。
ガキィインッ!
『…。』
神「チッ、大人しくしやがれ。」
だがひかりの太刀は難なく神田に止められてしまう。
神「おら、着いたぞ。」
神田はひかりの腕を掴んだままコムイの部屋へ入る。
キィ…
神「おいコムイ。連れ コ「あああぁぁぁッ!」うっせぇ、コムイ!」
2人が部屋に入るとムンクの如く絶叫するコムイの姿。
コ「か、神田君が…神田君が…っ、ひかり君と手をぉぉおッ!」
ガンッ!
コ「ブフッ!…ぇ、ぇ?」
いきなり頭に激痛が走ったコムイは意味が分からないかのように辺りを見回す。
するとそこには小太刀を持つひかりの姿。
『僕は今凄く苛ついているんだ。そんなことも気付かないのかい?少しは察しなよ。』
コ「ぁ、はい。ごめんなさい。」
“お、横暴すぎる!”と思ったコムイだったがそれをひかりに言う度胸など持ち合わせていなかった。
なのでその想いは心の奥底にしまう事にしたのだった。
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