黒子のバスケ

□あまのじゃくな私達
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「黄瀬、いる?」



クラスのドアから顔を出して幼なじみの名前を呼ぶ



「苗字? どうしたんスか」



私の幼なじみは、モデルで海常バスケ部エースの黄瀬涼太



モデルということもあって、ファンがたくさんいる



そのため、幼なじみである私のことをよく思ってない子も多い



「今日、待ってていい?」

「…いいっスよ」



素っ気ない返事にはもう慣れた



そんな私を陰で笑う女子たちを無視するようにニッコリ笑いかける



「じゃあ、後でね」



私は手を振り、その場を後にした





〜放課後〜
「なぁにが『いいっスよ』だっつの!」

「荒れてんなぁ、名前」

「笠松先輩!?」



バスケ部の練習を眺めながら愚痴を言っていると、キャプテンの笠松先輩が目の前に立っていた



「またなんかあったのか?」

「アハハ…いろいろと…」



苦笑いをして返すと先輩も苦笑いをした



先輩には前から相談していたから、私が苛々している理由が分かるのだろう



「落ち着けって」と言いながら、私の隣に座った



「まぁ、何かあったらまた相談に乗ってやるよ」



笠松先輩に頭を優しく撫でられ、少し心がすっきりした



「…はい」






部活も終わり、黄瀬と一緒に他愛のない話をしながら帰っていると、公園が目に入った



「この公園懐かしいなぁ…!」

「よくここで遊んだっスよね」



私達は自然と足が公園へと向かう



「ブランコだ… 最近乗ってないや」

「いや、普通いないっスよ…って、乗ってるし!」



ブランコに座り、少し漕いでみる


その時、フッと思った



「あーぁ、子供の頃に戻りたい!」

「なんでっスか?」



黄瀬もいつの間にか隣でブランコを漕いでいた



「だってさ、黄瀬はモデルやってないし、周りのこととか気にしなくていいじゃん」

「苗字はオレがモデルしてるの嫌っスか?」

「そういうわけじゃないけど…」



なんか遠い存在みたいでさ…と、笑って言った


(ヤバイ、泣けてきた…)


情けない顔を見られたくなくて俯いた瞬間、後ろから誰かに抱きしめられた



それが黄瀬だとわかるのに少し時間が掛かった



「き、黄瀬?! 誰かに見られたら…っ」

「別にオレはいいっスよ
てか、むしろ見せつけたい」



耳元でしゃべっているせいか、黄瀬の吐息が聞こえる



「(いやいや、私が良くないから!)モデルが何言ってんの!///」

「苗字の前では、モデルの黄瀬涼太じゃなくて、幼なじみの…男の黄瀬涼太でいたいんスよ…」



こんな弱々しい黄瀬を見たのは初めてだ



「もう、幼なじみだからとか言ってられないっス」

「どういうこと…?」

「オレ、苗字が好きだったんスよ! 子供の時から…!」

「えっ…? ウ、ソ…!?」



自分の耳を疑った



けどそれは、黄瀬の顔が赤くなってるのを見て本当なのだと思った



「名前は…どうなんスか?」

「……好きに決まってんでしょ!」






あまのじゃくな私達
(名前はキャプテンのことが好きだと思ってたっス)
(なんで?)
(だって、頭撫でられて嬉しそうにしてたじゃないっスか!)
(見てたの?!)











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