♪小説♪

□キューピッドは紙ヒコーキ
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お昼ごはんも食べ終わってなんとなくだるい午後の授業。
先生の説明なんて私の睡魔に拍車をかけているだけ。
ノートを見れば私の字は授業の前半の部分しか書かれていなかった。






カッ・・・!!





「きゃッ!!」

「びっくりしたぁー!!」

「すごい雨だね。」



ひとつの雷でこんなにも教室が騒がしくなるなんて。
どんよりと重たそうな雲からゴロゴロと聞こえてくる。
それでも私の目は覚めない・・・。



「ひーめッ!!おっきい音だったねー」



前の席の千鶴ちゃんが興奮して振り返る。



「う・・・ん・・・、そぉだね〜。ふぁ〜」

「あら、どうしたの姫?眠いの?」

「うん・・・。なんかお腹いっぱいで気持ちいいみたい。」

「満腹で気持いいだなんて・・・。私ならもっと気持ちよくさせてあげ・・・ッたぁいな、もう!!」




紙ヒコーキだ。
先の尖ったヒコーキが容赦なく千鶴ちゃんの頭にささった。
飛んできたほうを見ればたつきちゃんと目が合う。
自分の放ったヒコーキが命中したことが嬉しかったのか、ガッツポーズを決めるたつきちゃん。
なんだかおかしくて笑ってしまった。



「・・・。」

「?どうしたの?千鶴ちゃん?」



無言で前を向き黙々とノートにシャーペンを走らせる千鶴ちゃん。
きっと原因は飛んできた紙ヒコーキなんだとは思うけど。
そうして私の周りはまた先生の説明と激しい雨と雷の音で包まれた。
あと何分で授業終わるのかなぁ?
あの時計壊れてるよ、だって秒針が進むの遅いよ?
雨すごいけど・・・私傘持ってたっけ?
こんだけ激しいなら傘だけじゃ意味ないかな。かっぱが無いと・・・。
洗濯物・・・は干してないからだい・・・じょう・・・ぶ・・・。




――――――――・・・。




アレ・・・?
私寝ちゃってた・・・?
時計を見て確認するが、どうやらそれほど時間は経っていないよう。
寝る前と変わらない空模様、先生の声、文字が書き足されないノート。
そのなかに一つ変わったものが。



「・・・?紙ヒコーキ?」



机の上には一つの紙ヒコーキが着陸していた。
またたつきちゃんかな?
きっと寝てる私を見て呆れちゃったんだ。
ヒコーキの形をした紙をもとの形に戻す。
そこにはちょっと乱暴な男の子の字があった。



『雨すごいけど、井上傘持ってんのか?俺送ろうか?――黒崎』


黒崎くん!
えっ、えっ。
これは黒崎くんが飛ばしたものでしかも送ってくれるの!?
あ・・・。
鞄の中には折り畳み傘が入ってるんだ・・・。



「あー、もう時間が無いな。残りは次の授業のとき説明すっからここまでちゃんと書いとけよ。」



チャイムが鳴るより前に授業が終了し、遅れてチャイムが鳴った。
黒崎くんに返事を書く時間が無かった・・・。
どうして寝ちゃったのかなー。
黒崎きんも何も私が寝てるときに飛ばさなくても・・・。




「よぉ。」

「ひゃわぁッ!びっくりしたー、黒崎くん・・・?」

「ヒコーキ読んだ?」

「あ、うん。返事書こうとしたら時間なくなっちゃって・・・。あ、でも大丈夫だよ?私折り畳み傘持ってるし。心配してくれてありがとう。」

「そうか?ならいいけど・・・。」

「席着けー。簡単にHRすっぞ。」





越智先生の声で友達とおしゃべりをしていた人たちや立っていた人たちが自席に着く。
黒崎くんも例外ではなくて。



「雨すごいけど風邪とかひくなよ。明日の一時間目私の授業なんだからなー。以上!解散してよし!」



その一言で一斉に立ち上がって帰り支度をする。
私もこれ以上雨が強くならないうちに帰ろうと思い、少し早歩きで下駄箱を目指した。



「廊下寒いなぁ。やっぱ冬の雨は厳しいなぁ。」



はぁ、っと息を両手にかけてこすりあわせる。
大して効果はないのかもしれないけど気休めにはなる。




「「あ。」」



私と黒崎くんの声が重なった。
下駄箱には私よりも先に黒崎くんがいた。


「・・・途中まで一緒に帰るか?」

「えっ、いいの?」

「当たり前だろ?」

「それじゃ、あの・・・お願いします///」




ザーザーと激しい音を立てて地面を叩く雨。
きっと傘なんてさして帰ったら会話すら難しいんだろうな。
そう思いながら鞄の中から折り畳み傘を取り出す。
黒崎くんはすでに傘をひらいて待ってくれてる。
・・・そうだ。
私は傘を再びしまい、黒崎くんの元へと駆け寄った。
そのまま一緒の傘に入り込む。



「なんだ?やっぱ傘無かったのか?」

「ううん。こうしたほうがお話しやすいかと思って。」

「なッ///」



ほらね?
こうしたほうが黒崎くんの顔がよく見えるんだもん。



「じゃ・・・送ってくから。」

「ありがとう。」


傘を叩きつける雨の音がまるで心地よいBGMのよう。
少しくらい体の一部が濡れたってへっちゃらだ。



「あ。」

「どうしたよ、井上?」

「大したことじゃないんだけどね、コレって相合傘だなーと思って!」

「そう・・・なるのか・・・?」

「なるんです!」




小さな紙ヒコーキから始まるのもきっとありだよね。
あのときがあるから今がある。
そしてこれからが・・・。







■END■







*アトガキモドキ*
どうでもいいがこの二人は付き合ってるのか??((聞くな;
どうせなら紙ヒコーキで告らせちゃえばよかったかなー。
ていうかたつきは千鶴になんて書いたのでしょうね?

 

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