♪小説♪
□口付けは優しく
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朝なのか昼なのか夜なのか。
時間の感覚がおかしくなる場所にはいつも月が見える。
小さい窓から見える本来広いはずの空はとても小さかった。
ウルキオラが織姫の世話係として傍にいるようになってだいぶ経っていた。
気配を消すのは癖なのか、ウルキオラは音もたてずに織姫のいる部屋へと入る。
広い部屋には必要最低限のものしかなく、数人は座れるソファに織姫ただ一人が座っていた。
閑散としていて何も無く暇を持て余しているのか、織姫は自分の髪の毛先を掴んでは放したりと弄っていた。
「何をしているんだ?」
「え、あッ、いたんですか!?」
織姫の行動が理解できなかったウルキオラが声をかけると、初めてその存在に気づいた織姫が驚く。
ソファから立ち上がろうとする織姫を片手で制し、自分もその横に腰掛けた。
「髪が・・・どうかしたのか・・・?」
長い髪を一束掬いあげ、まじまじと見つめる。
「べッ、別になんでもないんですよ//ただ・・・ここにいるときって、髪を切るにはどうしたらいいのかな。と思っただけなんです。」
至近距離に感じるウルキオラの息に心臓が早くなるのをなんとか誤魔化しながら答える。
未だ掬い上げてはまた別の束を掬うという単調な行動をするウルキオラ。
どうしていいかわからずただじっと座っていることしか織姫にはできなかった。
やがて単調だった動作に変化があった。
掬い上げた一束に口付けをしたのだ。
「こんなに綺麗なのだから切る必要なんて無いだろう。」
「・・・えッ今///」
一気に顔を赤らめる織姫なんて構わずに、目を瞑りそっと口付けを続けるウルキオラ。
「あ、あの///恥ずかしいですッ・・・」
「嫌か・・・?」
「嫌じゃ・・・ないですけど・・・///」
「ならいいだろう。」
そういう問題では・・・。
そう呟く織姫の声などウルキオラの聴覚には届いていない。
「決めました!私、髪を切るとかもう考えません。」
いきなり立ち上がりそう宣言する織姫に呆気にとられるが、それはほんの一瞬だった。
「あぁ、そうしろ。俺はその長い髪が好きだ。」
心なしかいつもよりウルキオラの表情が柔らかくなった気がした。
「まるでお前は囚われの姫のようだな。」
「それじゃ・・・ウルキオラさんは王子様ですか?」
「お前が望むならな。」
「望みます!」
間髪いれずに即答する織姫を引き寄せ、抱きしめる。
壊れてしまわないように。
優しく。
背中に感じる織姫の両腕の温かさに心から安心する。
―お前は囚われの姫。
だが今では・・・
逆にお前という存在に俺が囚われているんだ・・・。
いずれ織姫を救いにくるであろう騎士たちに、渡すまいと誓いながらウルキオラは長く織姫のことを抱きしめていた・・・。
■END■
アトガキモドキ
んー・・・。
甘い・・・かな?
結局ウルは姫にゾッコンなのですよ♪
ただそれだけ。