♪小説♪

□偽りの姿に恋して
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『今日もいつもと変わらない素敵な一日でした!
そして相変わらずあの人は私の憧れの人です!
明日も楽しく過ごせればいいな!』


よし、日記も書いたし。
私の残る仕事はベッドに入って眠りにつくだけ・・・。
織姫は電気を消すとすぐに眠りについた。
幸せな夢を見ているのか「へへへ」などと寝言を言っている。
その寝顔は電気が消えていて見えないが、きっと至福に満ちた顔をしているのだろう。



―翌日―



「おっはよー!」

「おはよう、織姫。見てみなよ。アレ。」


通学途中たつきを見かけた織姫は傍まで駆け寄ると元気よく挨拶した。
それに対したつきはある方向を指し示す。
二人の前方には5、6人で道を占領しながら歩く小さな団体が。



「あー、ウルキオラ先輩?」

「そ。いつもすごよねー。必ず誰かしら周りにいるんだから。」

「先輩モテるからなぁ。確かファンクラブもあるんじゃなかったっけ?」

「らしいね。どうでもいいけど。私にはどこがいいのかさっぱりだわ。」

「そう?だって先輩優しいし、頭はいいし。」

「ルックスも悪くないほうだろうね。」

「やっぱりたつきちゃんもそう思う?先輩が慕われるのわかるような気がするよ。」

「でもなー、私はやっぱ嫌。なんか・・・裏表がありそうな感じで・・。」

「そんなことないよ!」


いきなり声をあげる織姫にたつきは一瞬びくりとしたが、すぐに納得したような表情をした。


「そーいえば・・・織姫はあの先輩に助けられたことがあったんだっけ?」

「うん!」


織姫は嬉しそうに笑いながら、思い出す。
ウルキオラと初めて話したときのことを。
それは織姫の自転車がパンクしたときのことだった。
家まではまだ距離があり、進まない自転車は押していくしかなかった。
重たい買い物袋が乗った自転車は押すのに力が必要で、歩く足には嫌でも力がこもっていた。
そんなとき―


「大丈夫?」

「・・・え?」


突然だった。
後ろからウルキオラが声をかけてきたのだ。
学校帰りなのか制服を着たまま自転車に跨る彼は心配そうに織姫に視線を送る。


「あ、えっと・・・ちょっとパンクしちゃっただけなんです!大丈夫です!」

「それって大丈夫じゃないんじゃ・・・?」

「でも、家まであとちょっとだし・・・なんとかなります。」



ウルキオラのことはよく知っていた。
学校で彼の名前を聞かないときは無いから。
悪い噂なんて聞いたことない。
しかし話したことは一度もなく、すれちがってもとくに何も無かった。
だからこの状況にどうしていいのか、わずかな混乱が織姫の中で生まれていた。



「俺が運ぶよ。」

「・・・はい?」

「君は俺の自転車に乗ればいい。」

「そんな・・・ダメですよ、悪いです・・・。」

「気にしなくていい。」



そう言うとウルキオラは自転車から降りると織姫を手招きし、自分の自転車に乗らせた。
やや強引ではあるが、ウルキオラは織姫の自転車を押しはじめた。



「家はどこなんだ?」

「この先です・・。でも、本当大丈夫ですよ?」

「いいよ。遠慮しないで。」


織姫は緊張のせいでそのとき何を話したかは記憶に残らなかったが、隣を歩くウルキオラの存在のせいで緊張しっぱなしだったのを覚えている。
そのとき以来話すこともなかった。
改めてお礼を言いたくても、なかなかタイミングがつかめず今までずるずると過ぎていた・・・。




「先輩は本当に優しい人だよ!」

「・・・先輩のこと好きなんだ?」

「えッ!?違うよ!?いや、違くないけど違うの!」

「とりあえず落ち着きなよ。何言ってるかわかんないから。」

「だからね、先輩のことは好きだけどそれは憧れとかそういう感じで、決して恋愛的なものじゃないの。」

「ほんとにー?」

「本当だよ!」



しつこく顔を覗きこむようにして聞いてくるたつきに織姫はやや顔を赤らめながら否定した。
前方を歩くウルキオラへの視線をなんとなく逸らしながら・・・。
織姫は今日こそちゃんとお礼を言おうと思うが、それはもう実現せずに一週間近く同じことを思い続けていた。
あれから一週間・・・。
きっと先輩にとっては小さな出来事だったから忘れてるよね・・・。
そう考えると何故か悲しくなる織姫だった。




「購買ー♪購買ー♪」


お昼休み。
織姫は持ってきたお弁当だけでは足りなかったのか購買までスキップ交じりに向かっていた。


「!?」


廊下を歩いていたら後ろから引っ張られ、その力に従い壁まで体が移動していた。
自分を引っ張った人物と目が合い驚く。
その人物は―


「ウルキオラ先輩!?」

「すまない、痛かったか?」

「大丈夫ですよ。でもびっくりしました〜。珍しいですね。一人でいるなんて。いつもは女の子がたくさんいるのに・・・。」

「・・・撒くのに苦労したから。」


「それで」「あのっ」


織姫は今こそチャンスだと言わんばかりに口を開くと、それはウルキオラの音と重なった。


「あ、どうぞ。」

「いや、俺は後で構わないよ。」


今更織姫はこの状況に緊張してきた。
あのときと同じような・・・。
しかし今は自転車を押しているわけでもなく、もっと近くに感じるウルキオラの存在。
後ろには冷たい壁。
前にはウルキオラ。
はさまれるような位置にいる織姫。
お礼が言いたいはずなのに恥ずかしくて、体の内側が熱くなっていく・・・。
静かすぎてお互いの呼吸が聞こえてくる。
そのうち心音まで聞こえてきそうだ。



「この前はどうもありがとうございます。本当に助かりました。」

「あぁ・・・。あれは・・・、まぁ・・・。」


意を決して沈黙を破った織姫の言葉に少し濁すように反応するウルキオラ。
『あれくらいは当然だ。』って思ってたのかな?
それとも忘れちゃってたのかな?
いろいろと考える織姫だったが、唇にウルキオラの冷たい指先の感触がすると、神経は唇に集中していた。
下手に喋ることもできず、なぞるように触れてくる指先にされるがままだった。
そして、その指が離れたかと思うと今度はまた違うものの感触。
人の唇の感触・・・。
ウルキオラの唇が優しく織姫と重なった・・・。
しかしそれは一瞬で、すぐに離れた。
間近にあったウルキオラの顔が離れたことに安心するが、どこかで残念がっている自分がいることに驚く。



「俺が優しくしたのはわざとだ。」

「へ・・・?」

「別に俺は優しくなんかない。お前に近づくためにそうしただけだ。印象に残すためにな。」

「え、っと・・・。」

「お前の性格からして礼を言いに来るだろうと思っていたんだがなかなか来なかったから自分から接近した。」

「あ・・・の・・・。」


一気に言ってくるウルキオラにろくな返事もできないでいた。
私に近づくため?
何で?
なんか恨み買うようなことしちゃったのかな?
そういえば・・・。
口調も違う気がする・・・。
こんな喋り方だったっけ?
考えても答えは出てこない。




「お前が好きだ」「ごめんなさい!」




とりあえず謝らなくてはと思った織姫の言葉にまたも声が重なる。
しかも最悪のタイミングで・・・。



「・・・」

「えっ・・・!?いや、あの、今の謝罪はなんか悪いことしちゃったのかなと思って・・・。でも・・・先輩が私を・・・?そんな・・・」

「・・・なら聞かなかったことにする。・・・もう一度言う。お前が好きだ。お前じゃなきゃダメなんだ。」



強い眼差しと強い視線。
つい数分前まではこんな展開予想もできなかった。
織姫の心臓は激しく音を立てている。

先輩が私を・・・?
私は・・・



「別に返事は今すぐでなくてもいい。」

「好きです!私も・・・先輩が・・・」

「・・・フッ、そう言うと思ってたがな。」

「何ですか、それ〜。なんかずるい・・・。すごい緊張したのに・・・」

「詫びとして帰りに何か奢ろう。」

「え、いいんですか!?やったー!」




織姫は最初の目的を忘れ、購買からどんどん離れていく。
胸が満たされ、いつの間にか空腹を感じなくなっていた・・・。
そして今日も織姫は日記を書く。




『今日もいつもと変わらない素敵な一日でした。
あ、嘘です!
一つだけ変わったことが。
先輩が憧れの存在から大切な存在になりました。
明日が来るのが待ち遠しいです!』





■END■






*アトガキモドキ*
やってしまった学パロ。
前半のウルは誰ですか?
後半のウルはウルですか??
もうダメダメ感丸出しでゴメンナサイorz
憧れという感情はすぐに恋愛感情に変わるものなんですかね?
まぁ、いいですよね!うん。
読んでくださりありがとうございましたw


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