♪小説♪

□眠り姫の呟き
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う、ん・・・。
やっぱり窓際は暖かくて気持ち良いなぁ。
背中に太陽の日差しを感じていたら当然のように睡魔に襲われた。
朝から眠かったけど、帰りのHRも終わって後は帰るだけなのに・・・。
どうしよう・・・、寝ちゃいそう・・。
それに、まだ来ないみたいだし・・・
少し・・眠って待ってようかな・・・。


「・・・・・・zz。」


織姫以外誰もいない教室で静かに寝息だけが響く。
窓際の1番後ろの席に突っ伏して眠る織姫は、誰にも気付かれず簡単に夢の世界へと旅立ってしまった。
開いた窓からは穏やかな風と一緒に部活に励む生徒たちの声が聞こえてきた。


「・・・織姫・・・?」


教室に入ってきたのはウルキオラだった。
隅の席でぽつん、と眠っている織姫を見つけて思わず様子を見に入ってきたのだ。
余計な雑音を作ってしまっては寝ている織姫に申し訳ないと思ったのか、足音をたてず最小限の動きで織姫の傍まで近寄るウルキオラ。


「気持ちよさそうに眠っているな・・・。」


寝顔を見て表情を綻ばせると、着ていたブレザーを織姫にかけてやった。
ウルキオラの温かさの残る上着が織姫を背中から包み込む。


「ん・・・・」

「・・・!」


起こしてしまったのかと思ったが、ただもぞもぞと動いただけで起きはしなかった。
窓から侵入してきた微風が織姫の髪をふわりと揺らす。
それに合わせる様に指を絡めて、髪を一房、二房と弄んだ。
少し屈んで耳に髪をかけてやり、唇を近づける。


「織姫・・・、こんなところで寝ていては風邪をひくぞ。」


低い音色で囁けば、少し擽ったそうに身じろぐだけで全然起きる様子がない。
自然と愛しい気持ちがこみ上げ、ふわりと髪にキスを一つ落す。
前の席に座り寝顔を眺めるのも悪くないと考えたウルキオラはしばらくそこにいることにした。

「・・・・・・。」


穏やかな時間がウルキオラをうとうとさせていたとき、また一人、教室に慌しく入ってきた。


「やばいやばいやばい!明日までなの忘れてたー!!あー!!くそッ!!」

「煩い黙れグリムジョー。」

「ん?なんでテメェがここに・・・って織姫寝てんのか。」

「わかったなら大人しくしていろ。起きてしまうだろうが。」

「起こせばいいじゃねぇか。大体静かに寝かせてやりたいんなから窓閉めるとかしろよ。」


そう言って開いていた窓を全部閉めきるグリムジョー。
先程まで聞こえていた外からの喧騒が遮断され、静かになった。


「何故閉めた・・・?」

「煩いとコイツが起きるからだろうが。それぐらい気ぃ利かせて閉めてやれよな。」

「閉めたら風が入ってこないだろう。せっかく織姫の髪が靡いていたというのに・・・。」


窓を閉めたことが気に入らなかったのか少し喧嘩口調になるウルキオラ。
負けじと相手をするグリムジョー。
二人の言い争いにも気付かず幸せそうに眠る織姫。
なんとも奇妙な光景だった。


「大体、慌てて戻ってきたどうしたんだ?」


だんだんと不毛な会話になってきている気がしたウルキオラは最初に慌てて入ってきたことを思いだして聞いた。


「お、そうだ。忘れてた。学校に辞書忘れちまってよ。これがなきゃ英語の課題進まねぇんだよ。今回は織姫に教えてもらったから低い評価はもらいたくねぇし。」

「織姫に・・?一緒に勉強でもしていたのか?」

「あぁ。図書館で教えてもらった。すげぇ教え方上手ぇんだよコイツ。危ねぇ、危ねぇ。辞書のことすっかり忘れてたぜ・・。」


織姫、とその名前をどれだけ優しい表情で紡いだかきっと本人にはわかっていないだろう。
織姫を見る眼差しには温かさが帯びていて、それを見たウルキオラの中になんとなく嫌な気持ちが流れ込んだ。


「辞書はあったんだろ?さっさと帰ったらどうだ?」


グリムジョーの瞳に一分一秒でも長く織姫が入るのが我慢できず、帰るように促す。
しかし返答は思いもよらないものだった。


「織姫が起きるまで待つ。一緒に帰りてぇし。」

「な、に・・・?」

「お前こそ帰んなくていいのかよ?」

「俺はいいんだ。」


何がいいのか自分でもわからないくせに、しかしそれ以外になんと言っていいかもわからずただそれだけ言う。


「ん・・・?」

「ノイトラ様?どうしました?」

「あれ、見てみろよ。」


まるで部下のように後ろにテスラを従えて、ノイトラが廊下の中央を我が物顔で歩く。
その足を止めたのは隣のクラスのウルキオラとグリムジョーと織姫がいる教室が見えたからだ。


「あの三人がどうかしましたか?」

「あの三人っつーか、あの女。アイツ面白いくらいにからかい甲斐があるからよ。」

「はぁ・・・。どうします?入りますか?」


テスラの問いに答えず勝手に入るノイトラ。
思いっきり口角を上げて三人のもとへと大きな歩幅で進んでいく。


「何やってんだよ、てめぇら?」

「まったく・・・。グリムジョーの次は貴様か。」

「ノイトラこそ何しに来たんだよ?」

「面白そうだから。ただそんだけ。」


また一人増え音量が上がる三人の会話ですら、織姫を起こすことはできず相変わらず眠っていた。


「んで?なんでコイツは寝てんだよ?起こさねぇのか?」

「気持ちよさそうに寝ているのに起こしては可哀想だろう。」


ノイトラの質問に律儀に自分なりの理由を述べるウルキオラ。


「ふーん、それじゃ・・・。」


・・・ちゅっ
・・まさにこんな音を立てて織姫の頬にキスをするノイトラにその場にいた全員が動けなくなった。


「なにしてんだよテメェは!」


先に動いたのはグリムジョーだった。


「なにって・・・。なんかの話であっただろ?寝てるお姫さんにキスすると起きるってやつ。あれやっただけだ。あ、口にするんだっけか?」


今にも胸ぐらを掴みかかりそうな勢いのグリムジョーをどうでもよさそうに見下ろし、ノイトラは説明する。
テスラがノイトラとグリムジョーの間に入ってノイトラのことを庇っていると、何かが聞こえてきた。


「・・・・・・・・・。」


それはあまりにも小さな織姫の寝言だった。
誰もなんて言ったのか聞き取れず、また言わないだろうかと暗黙の了解で静かに待ってみた。
しかし織姫は何も言わず、眠っているだけだった。


「コイツ、絶対俺の夢見てたぜ」


何を根拠にかは知らないが自信満々にそう言うノイトラに反論したのはウルキオラだった。


「織姫が貴様なんぞの夢を見るわけがあるまい。間違いなく俺だ。」

「てめぇこそ何言ってんだよ。明らかに俺の夢に決まってんだろ。」


三人でぎゃーぎゃーと織姫の寝言を勝手に想像して自分の夢だと言い切る中、テスラも例外ではなく頭で想像しているようだった。


「織姫ー!」


そこへ現れたのはネルだった。
元気に織姫の名前を呼ぶと、言い争っている三人を見て何をしているの。と問うように視線を投げた。
しかしそれ以上のことはせず、織姫を揺すって起こすと笑顔で「帰ろう」と言った。


「私寝ちゃってたんだね・・・。あれ?どうしてみんないるの?」


織姫はその場にいたネル以外の人物一人一人を不思議そうに眺めると、自分にかけられていた上着の存在に気付いた。


「え、コレ?」

「それは俺のだ。風邪をひくといけないと思ってな。」

「ありがとう!でもウルキオラくん寒くなかった?大丈夫?」

「あぁ、平気だ。」

「あ、そうだ!グリムジョー、英語の課題できそう?」


ウルキオラに上着を申し訳無さそうに返すと、今度は思い出したよにグリムジョーに話しかける織姫。


「あぁ、いろいろ教えてくれてサンキューな。」

「えへへ、どういたしまして。それじゃネルちゃん、帰ろう!」


照れくさそうな笑顔をグリムジョーに向けると待たせていたネルの手を引いて教室を出ようとする織姫を呼び止めたのはノイトラだった。


「なぁ、織姫。お前どんな夢見てたんだ?」

「え?夢?」

「なんか寝言言ってたぜ?」

「えっと・・・。あぁ!そうそう!ネルちゃんとケーキバイキングに行く夢見たの!」


楽しそうに見た夢を語る織姫とは反対に、自分の夢を見ていたと思い込んでいた男達はそれなりにショックを受けていた。


(俺じゃなかったのか・・・。)


心が一つになった瞬間だった。
ネルと手を繋いで女の子特有の雰囲気を発しながら織姫とネルは教室を後にした。
後に残された男達は虚しい思いを互いに悟られまいと表面上には出さないように各々帰路につきはじめた。
すっかり暗くなりはじめた空はなんとなくそんな男達の心情を表しているようで、その中に光る一番星はまるで何も知らない織姫みたいだった。




END




アトガキモドキ
大変お待たせして申し訳ないですorz
CANちぃ、時間ばかりかかって大したことの無い文になってしまったよ。ごめんよorz
破面×姫だったからウルとかグリを登場させたけど、ノイトラはいらなかったかな?と書き終わって思った。
まぁでも彼は姫の頬にチューしてるしね。まぁいいかな。
最後はネルに美味しいトコロを持っていってもらいましたw
だってネルも破面だし・・ありかなーと思って。
リクしてくださりありがとうございましたw


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