♪小説♪

□いつも身につけていたい
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「ほら、ちゃんと笑ってね黒崎くん!」

「お、おう・・・。」


今日何度目のシャッター音だろうか。
それにあわせて笑顔を作りポーズを決める。
自撮りもあれば道行く人に頼んで撮影したり。
デジカメの中にはきっと場所は違えど同じ人物たちがポーズをしている写真がたくさん入ってるのだろう。
しかし一護にとって不思議で仕様が無かった。
そもそもこのデジカメは織姫のもので、頻繁に撮影するようになったのはつい最近だった。
以前も出かけるたびに写真を撮ることはそれなりにあったのだが、今では部屋でくつろいでるときでさえ写真を撮っている。


「なぁ、井上。こんなに写真撮ってどうすんだよ?」

「黒崎くんは私と一緒に写真に写るのが嫌なの?」


・・・俺が聞いたことに対しての回答じゃないですね・・。
そんなことを思うが、幸せそうに今までのデータを見る織姫を見ると自分も笑っていることに気付いて心が温まるような感覚がした。


「こんなにたくさん写真撮ってるけど、さ・・・。この中から1番のもを選べる?」

「は?」

「少なくともここに写ってる私はね、黒崎くんが隣にいてくれて幸せなの。」

「そりゃ、俺だって同じだぜ?」

「でもね、どうしてもこの名中から1番を決めたいの。」

「・・・なんで1番を決めなくちゃなんねぇんだよ?全部が1番でいいじゃねぇか。」


はは・・・、と可笑しそうに笑う織姫を、外にいることやまわりの目も気にせずに、立ち止まり唇に掠める程度に触れた。
なんの前触れもなくキスをすることはよくあることで、織姫はなんとなく一護はキス魔なのかもしれないと思っていた。
もちろん自分限定のみ、だが。


「ねぇ、黒崎くん。最近私に変わった部分があるの・・・気付いてた?」


突然の質問に一護は織姫を上から下まで眺め回した。
その視線を恥ずかしく感じたのか少し俯き加減になる。
いつも通りの余所行きの可愛らしい服・・・だと思う一護。
最近は暖かい、というよりむしろ蒸し暑い日々が続いているせいか長い髪は一つに結わい上げられている。
それ以外に変わったところは・・


「あ、その首飾りか?」

「ふふ、やっと気付いた〜。これね、ロケットペンダントっていうんだ。」

「あぁ、中に写真とか入れるやつか。あ・・・」

「わかっちゃった?だから最近写真撮ってるんだ。だから今はまだ何も入ってないの。」

「なるほどねぇ。」


ロケットを開けてみせる織姫。
中には何もなく、閉じていればそれはただの首飾りとなっていた。


「ま、じっくり考えればいいんじゃねぇか?」


のんびりとした口調で一護は織姫のロケットを見つめながら言った。


「その中に入るのが、俺と井上が笑ってる写真なら俺も嬉しいし。」

「黒崎くん・・・。そうだ、黒崎くんも一緒につけない?コレ。」

「あー・・・俺は・・・そういうのつけてると・・・知らない間に落しちまいそうだし・・・。」

「大事にしてれば大丈夫だよ!」

「・・・じゃ、俺もロケット買おうかな・・。で、肝心の中はどうすんだよ?」

「そうなんだよね・・・、どうしよっか?どれにしようか迷うよね。」

「井上、」

「何?黒崎くん・・・」


カシャッ


「あッ、いきなり撮らないでよー。」


ぷっくりと頬を膨らませ不満そうに言う織姫を「悪ぃ悪ぃ」と形式上の謝罪をして、再びアングルを合わせ織姫を撮った。


「黒崎くん・・・せめて『撮るよ』とか『はい、ポーズ』とか言ってほしいよ・・・。」

「けどそんなに変な顔してるわけじゃねぇし、可愛いぜ?」

「なッ//かかか、可愛くなんかないよッ・・・//」

「決ーめた。俺この写真入れるわ。」


今撮ったばかりの織姫の写真を確認する。
目線も合っていなくて笑ってもいない織姫。
頬に空気をためて膨らませているまるで子供のような織姫がいた。


「えー・・・、まぁ黒崎くんのロケットだし・・。好きなのを入れていいと思うけど・・・。」


やや納得のいかなそうな織姫だったが、一護からデジカメを返してもらうと何を思ったのかいきなり一護を撮影した。


「お、おい!」


不意打ちの行動にびっくりする一護だが、織姫は悪戯が成功したしたり顔で笑っていた。


「えへへー、お返しだよ!・・・それじゃ、私もこの黒崎くん入れようっと。」

「マジっすか・・・。」


自分としたことと同じことをされるとは予想していなかった一護だったが、デジカメを持ち織姫を傍に抱き寄せると、それを察知したかのように織姫は満面の笑みを浮かべ一護も眉間のしわを消すと同時にシャッターを押した。


「やっぱり自撮りだと少しずれちゃうね。」

「けどなかなかいいよな。」

「うん、これ一緒にいれよっか?」

「俺も同じこと思ってた。」

「じゃ、決定ー!」


数日後、二人の首元にはこのときの写真が入ったロケットが輝きを放っていた。
たくさんの思い出はどれも1番なんて決められないほどに大切なもので、一緒に過ごす時間はかけがえのないもの。
二人の首元にあるのは日常の幸せの一コマに過ぎないのかもしれない。






■END■







アトガキモドキ
一織はほのぼのラブが1番だよ。
写真っていいですよね、青春の1ページですよね。
この二人には末永く幸せになってもらいたい。
そして私もロケットに入れる写真が欲しい。というか幸せが欲しいィィ!


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