♪小説♪

□ホスト
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「ウルキオラさんって、スーツ着たら絶対似合うと思うんです。」


織姫の突然の言葉に優雅に紅茶を啜っていた男は吹き出しそうになった。
せっかく藍染に呼ばれた茶会もどきを自分が口から紅茶を噴射させて台無しにしてはまずいと思ったウルキオラはなんとか持ち堪えたが、そんな原因をつくった織姫は「大丈夫ですか?」と呑気に心配している。
藍染はというと、表情こそは変わっていないが「おやおや、紅茶が喉につまったのかい?」とどこか楽しむような口調で言ってくる。
何を恨めばいいのかわからなくなたウルキオラはとりあえずその場にいたもう一人の人物、グリムジョーを睨んでおいた。
もちろん身に覚えなどないが、喧嘩を売られて黙ってるような男ではないグリムジョーは超低音で「あ゛?」と言いその視線に返事をした。


「まったく…君たちは犬猿の仲というのだろうね。見ていて実に飽きないよ。ねぇ織姫?」

「え?あ…そうですね…でも喧嘩するほど仲がいいといいますし!」


自分に話を振られてもこまるのだがと思いながらも思ったことを口にする。
それを聞いた二人が「「ふざけるな!」」と大声でハモったのでこれには藍染も織姫も笑うしかなかった。


「ところで織姫。さっきはいきなりどうしたんだい?ウルキオラにスーツが似合うとかなんとか…。」

「あ、それはウルキオラさんを見てたらなんだかエリートビジネスマンに見えて。ちょっと思っただけなんです。」

「君はウルキオラを見つめながらそんなことをいつも思っているのかい?」

「う…///それは…別に…///そんなわけじゃ…。」

「ふふ…可愛いね君は…。これから織姫に見つめられたら何か妄想されてるということだね、ウルキオラ?」

「俺は構いません。織姫の思考も受け入れて愛してますから。」

「おやおや、これは予想外の言葉だったな」

「じゃあテメェは織姫に自分のことをペットみたいに思われても平気ってことだな?」


織姫と藍染とウルキオラの会話に割って入ったのは少し取り残されていたグリムジョー。


「俺なんかこの間この女に『グリムジョーは犬みたいで可愛いね!大好き!』って言われたぜ?」

「な、なんだと…?」

「グリムジョーが可愛いだなんて…織姫の発想力はすばらしいね。」

「いやぁ//それほどでも・・///」

「おい、織姫。こんな奴に『大好き』と言ったのか?本当か?」


余程ショックを受けたのか織姫の肩を掴みながら事実を確認しようとするウルキオラだが、肩を揺らされていて頭が前後に動きとても喋れるような状況ではなかった。
見かねた藍染は織姫に近づきウルキオラから引き剥がすと自分のところへ引きよせた。
二人の距離はほぼ0。
藍染の腕のなかに捕らえられた織姫の姿が、ウルキオラとグリムジョーの目に映る。


「まったく…。ではこうしようじゃないか。織姫、犬のように可愛いのはグリムジョーではなく私だ。いいね?想像してごらん?」

「は、はぁ…。」


藍染に抱きしめられてるというのに抵抗しないというのはウルキオラとグリムジョーにとって大問題だった。
なんとか二人を離れさせようと思案し、いくつか思いつくが実行できずにいる。
相手はあの藍染なのだ…。
そうこうしていると織姫はその豊かな想像力で犬のような藍染を脳内イメージし終えたのか少し引きつった笑顔で藍染を見ていた。


「悪くは…ないんじゃないですか?」

「そうだろう?では次。スーツが似合うのもウルキオラではなく私だ。いいね?」

「はい…」


数秒目を閉じ考える織姫を相変わらず笑顔のまま抱きしめている藍染を見て、グリムジョーとウルキオラは二人とも同じことを思った。


((スーツ着たらまるでホストだ…。))


「どうだい?織姫、私のスーツ姿はよく似合うだろう?」


ウルキオラとグリムジョーが思っていることなど知るはずもなく、どちらかというと今この場には自分と織姫しかいないというような態度で藍染の織姫への言葉は進んでいく。
そして織姫は…


「あ!藍染さんがスーツ着たらまるでホストみたいですね!かっこいいですよ!」


興奮してウルキオラとグリムジョーが思っていたことを言い出した。
…かっこいいは余計に感じる二人だったが、この場にいる男でスーツが似合うのは藍染だと二人とも認めざるを得ない心境だった。


「惚れてもいいんだよ?」


調子に乗って織姫の顎を上げ今にもキスしそうな勢いの藍染をウルキオラとグリムジョーが黙って見ているわけがない。


「「やめろ!!」」


声が重なり同時に二人を引き剥がすウルキオラとグリムジョー。
見事な動きだ。まるで事前に打ち合わせをしていたような。
もちろん、打ち合わせなどしていないのだが。


「くっくっくっ…。やはり君たちは織姫の言うとおり仲がいいみたいだね。おかげで毎日飽きないよ。」


笑いながら藍染は冷めているであろう紅茶を一気に流し込み一人その場から去った。


「おい、俺たちも戻ろうぜ。」

「そうだな…。織姫、行くぞ。」

「あ、はい…。」


織姫は至近距離にあった藍染の顔がまだ頭から離れず、顔が熱くなるのを感じていた。
そのことをウルキオラとグリムジョーに知られないようにするために、二人よりも数歩先を歩いていたが、まさかそんな理由があるとは知る由もないウルキオラとグリムジョーは前を歩く織姫を静かに見つめているだけだった。






■END■




アトガキモドキ
織姫総受けにしたつもりなんですが…。
どちらかというと藍染さんが出しゃばって終わっちゃいましたね。
でもこんな藍染は嫌いじゃないw
織姫もね、別に藍染さんが好きというわけじゃないかと。
でもたぶん恋シュミでいうと一番新密度が高いのは藍染さんじゃないかなw
きっとウルとグリの頑張り次第ではエンディングは様々かとww


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