□小説□

□所詮擬似恋愛
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「触らないで。近寄らないで。話しかけないで。」

「…あ?何言ってんだてめぇ…?」

「ヒル魔くんなんて大嫌い。」


脈絡も無く意味不明なことを言うかと思えば最後の言葉はさすがに効いた。
そして意味がわからない。
いや、言葉の意味はわかるがなぜ自分がそんなことを言われなければいけないのかがわからない。
ここ最近でこの女の機嫌を損ねるようなことをしただろうか?
部活日誌を書く手を休めることなく文字を綴っていく姉崎の手を見ながら過去を振り返ってみる。
…身に覚えがないな…。


「…って、いきなり言われたらどうする?」

「…は?」

「だから、たとえばの話よ。私がヒル魔くんを嫌いになったらどうする?」


なんだそういうことか。
現実の話ではなくただの例え話。


「別にどうもしねぇよ。」

「なんで?嫌いって言われてるのに何も思わないの?」

「人の感情なんざ常に同じなわけねぇだろ。」

「うん、そうだよね…。ヒル魔くんらしいな。そういう考え。」

「逆に聞くが、てめぇはどうなんだよ?俺に嫌われたらどうする?」

「あら?私ヒル魔くんに好かれてたかしら?」

「お前な…。」

「ふふ、冗談よ。…そうねぇ…やっぱり悲しいと思う。」

「一般的回答すぎてつまんねー。」

「うるさいわね。だって悲しいものは悲しいもの。…でも、その悲しは人生の中のほんの一瞬だと思う。」

「だろうな。」

「きっと一生悲しいままじゃなくて、そのうち薄れていくわ。」

「だから言ったろ?人間の感情なんざそんなもんだ。」


永遠を夢見るのはただのバカな女だ。
恋愛なんていうのはそのときの一瞬を燃え上がらせるもんだろ。
ロウソクの火と同じでいずれは消える。
その消えるときが人間の場合、死んだときか、ただ単に気持ちが消えたときか。
そのどちらかなだけ。
どちらにしても恋愛に永遠を求めるのはどうかしている。
終わりがあるからこそ価値があるというのに…。


「でもやっぱり、今の私にはヒル魔くん以外の人なんて考えられないわ…。」

「そりゃそうだろ。お前は俺にベタ惚れだもんなぁ?」


口の端を上げ笑ってやった。
今のコイツには俺しかいないのと同じで俺にはコイツしかいないというのはわかっている。


「ヒル魔くん。」

「なんだ…?」

「キスして…?」


珍しく自分から求めてくるから容赦なく口付けてやった。
直前まで視線が重なりあい、先に閉じられた姉崎の瞼。
顎を掴み舌を挿入すれば答えるように姉崎も受け入れてくれて。
乱暴なキスでさえ優しく迎えてくれるのか…。


「私…ヒル魔くん以外の人とキスするなんてきっと無理よ。今のでわかったわ。」


唇が離れて開口一番がソレか。
一人で勝手に納得しやがって。


「だって、優しいキスなんて望んでないもの。私はヒル魔くんのキスだけが欲しい…。」

「それなら一生俺のことだけ見てるんだな。」

「…えぇ、そうね。そうする…。」


バカだな俺達。
終わりのある永遠を望むとはな…。


「んー!なんかちょっと暗い話になっちゃったね!帰りどこか寄らない?」


日誌を書き終わったかのか軽く体を伸ばしながら帰り仕度を始める姉崎。
それに合わせるように俺も鞄を肩にかけた。


「糞甘ェ物が無いとこなら付き合ってやる。」

「まだこの間のこと根に持ってるの?雁屋のシュークリーム買っただけじゃない。」


言い合いながら部室を出れば既に外は薄暗かった。
前まではまだ明るかったというのに。
こういうときに季節の変わり目を感じる。


「お前今日暇か?」

「どうして?」

「寄り道を提案するくらいだ、暇なんだろ?」

「だったら何?」

「飯作ってけよ。俺ン家で。」

「…また?この前もこんなやりとりしなかったっけ?」

「嫌か?」

「いいえ。喜んで。それじゃスーパーに寄らなくちゃ。」


並んで歩く帰り道。
しばらくはこの日常が続くんだろうな…。







■END■





アトガキモドキ
う〜ん…
最近ヒルまもが書けないな…。
というか話のネタが無いよorz
とうとう愛について語り始めてるしね(笑)
ウチのヒルまもはダメだぁぁぁorz
もっとこう…!ドキッとするようなお話が書きたい、もしくは妄想したいw


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