□小説□

□一番は君
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「リクオくーん!早くしないと置いて行っちゃいますよー?」


学校からの帰り道、すっかり秋色に色づいた街路樹を追い越しながら、つららは後ろを歩くリクオを振り返って行った。
黄色と赤が重なり合うようにして散っている落ち葉を踏むと、足元からはザッ、ザッ、と小さな音が聞こえてくる。
それが楽しいのか、それとも他に原因があるのか、リクオたちの前を行くつららはとても楽しそうに見えた。


「リクオくーん?」

「つらら早いよ。カナちゃんもいるんだから。」


『カナ』という人名にぴくりと耳を動かし、ご機嫌だったはずのつららは一気に元気さを失う。
リクオの隣を歩く幼馴染のカナは、寒いのか両手に息を吹きかけながら小さな歩幅で歩いていた。
それに合わせるように隣にはリクオがいて、2人で時折笑顔を見せながら話している。
清十字団のみんなで学校から帰ると必ず最後に残るのがリクオ、つらら、カナの三人だった。
それでもあと少し歩けばカナとも別れ二人きりになれる。


(もう少しの我慢よ、私!)


そして相変わらず前につらら、数歩後ろにリクオとカナの状態で帰り道を進んでいった。


「じゃーね!また明日学校で!」

「うん、バイバイ。気をつけてね、カナちゃん!」


手を振り別れの挨拶をするリクオたちを見ながらつららは安心感にも似た感情を抱いていた。
やっと、二人だけ…。
それでも手放しで喜ぶことができず、なんとなく心がすっきりしない感じがいていた。


「どうしたのつらら?なんか怒ってる?」

「いいえ?何も怒ってませんよ。」

「本当に?帰り道の途中で機嫌悪くなったように見えたから…。」

「きっとリクオ様の勘違いですよ。」

「…ならいいんだけど。」


短い会話を終了させ2人だけの帰り道を歩く。
すっかり冬が近づき日が沈む時間も早くなってきた。
太陽の光の代わりをするかのように街頭が夜の町を明るくしていく。藍色に染まっていく空には強い光を放つ一番星と三日月が、綺麗に互いを尊重し合うかのように輝いていた。


「星、綺麗だね。」

「そうですね。特に冬の空は綺麗に見えるから好きです。」

「そっか。もう冬なんだ…。つららの季節、だね…?」


雪女であるつららにとっては一番過ごしやすい季節だ。
木々が葉を散らせ衣替えを終了させればつららの季節がやってくる。そのせいか、最近のつららはいつもより楽しそうに見えたのかもしれない。少なくとも夏よりは生き生きとして見える。


「つらら…。」


トーンの落ちた声で名前を呼ばれた瞬間心拍数が上がったかのように思えた。隣を見れば先ほどまでとは纏う空気も容姿もすっかり変わったリクオがいて、つららは素直に驚きの表情を見せていた。


「何を驚いてるんだ?闇が迫れば俺の時間だ…。」

「若、あの…」

「なんだい?」

「私はなぜ引き寄せられているのでしょうか…?」


つららの腰にはリクオの右手が添えられぴったりと密着しながら歩いていた。


「そんなの寒いからに決まってるだろう?」

「でも…私がくっついたら若が余計冷えてしまいますよ…?」

「バカだな。だからつららが寒くないように俺が寄り添ってやってるんだろ。」

「若…。」


リクオの気遣いが嬉しくてつららは自分からその身をリクオに寄せた。温かいぬくもりはつららを骨の髄から溶かしていくように沁み渡っていく。


「若は私にとって太陽であり月でもある人です。」

「なんだ?いきなり…。」

「いつでも、どんなときでも…私にとって一番大切な存在。なくては生きていけない…。そう思ったんです。」

「なぁ、つらら。あの星が見えるか?」

「え…?」


そう言われて空を見上げるが、リクオの言っている星がどれのことかわからない。


「俺が月なんだろ?ならつららはあの星だ。」


リクオが指し示すところにあるのは他の星よりも強く存在を主張している星があった。


「いつも眩しいくらいに輝いてる。それがつららだ。」

「あれが…私…。」

「あぁ。俺にとっての『一番』だ。」


なんだかくすぐったい気持ちになって、つららはクスリと控えめな笑みを零した。
突然、足を止めたリクオ。
一緒に歩いていたつららも立ち止まった。
どうしたのかと問おうとするが、つららの唇はリクオの唇に塞がれ言葉は音になること無くつららの口内で消えていった。
柔らかい感触が数秒続き、熱さを帯びていく互いのそれ…。


「ッ…ん…、若…?」

「つららがあんまり可愛く笑うからな。いきなりしたくなった。」

「もうッ…!」


それから2人はまたぴったりと寄り添い合って家までの短い道のりを歩いて行った…。
時々夜空に浮かぶ星と三日月を見ながら…。











地上で共に輝こう





■END■




アトガキモドキ
あれ?青は?
っていうツッコミはどうぞ心の中だけでw
いや、私も思ったけどね?でもここはあえて青はいない方向で考えてくれると嬉しいですw
最初のほうは昼リクです。リクオとカナが親しそうにしてるのを見てヤキモチなつららが書きたかった。決してリクカナではありません。どちらかというとリクつら←カナですwで、後半は夜リクです。この二人を恋人っぽく絡ませたかったですけど…どうでしょう?今までの夜リクつらって主従関係が強かった気がしたんで…。
自分的にはまぁまぁ満足してるからオッケーってことでw


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