□小説□

□音になる前に何度でも殺そう
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常に月だけが綺麗な存在として暗闇の中にある。
あんなに綺麗な月を眺めて流れる涙はひどく穢れているように思えた。
みんなと一緒にいた自分はどこに行ったんだろうか?
あのころの気持ちはどこへ消えたのだろうか?
最後に別れを告げたあの人にはもう…一生会ってはいけないと思った…。
何度生まれ変わっても、そのたびに同じ人を好きになる自信があった。
…でもそれは所詮過去のこと。
私の心は毎晩毎晩、あの冷たい人に染められていく…。
太陽のように眩しかったあの人は、きっと今の私を見たら蔑むだろう。
もう二度と、仲間とは思ってくれないだろう…。
それくらい私はあの銀色の輝きを放つ月を見つめてしまっている…。


「また泣いているのか?」


気配がなければ音もなくウルキオラさんが私の背後に立っていた。
その存在を感じながらも私は振り返ることも返事をすることもできないでいる。
自分の気持ちに抗うかのようなちっぽけな抵抗は無意味だと言わんばかりに次の瞬間には抱きしめられていた。


「…。」

「…。」


私も彼も何も言わない。
こうして彼の腕に包まれるのは何度目だろうか?
最初こそは驚いたものの、今となってはこの後の情事の始まりの合図でしかない…。


「相変わらず綺麗だ…。」


鬱陶しそうに衣服を剥ぎ月明かりに照らしだされる私の裸体を見てウルキオラさんは言う。
肌の上を温かさの感じられない白い指先が滑っていく…。
その冷たい感触は私の体の内側を疼かせるもの。
撫でられていた部分に吸いつかれ、そこに綺麗なウルキオラさんの印が増えていく…。


「ウルキオラさん…。…ぁ…っ」


いくつもの紅華を咲き散らかせていくウルキオラさんを無意識に呼んでいた…。
胸への愛撫を一時中断して顔を上げたウルキオラさんと視線が絡み合う。
本当は続くはずであった言葉を殺した。
愛の囁きはただの罪作りでしかないと知っていたから。
それでも殺せない気持ちをただ瞳に宿して、互いに見つめあう…。
本来幸せな行為であるはずなのに私たちは体を重ねるごとに切なく、そして苦しめられているようだった…。
何も言えない…。
言葉にできない代わりに口付けを交わす…。
愛しい気持ちを封じ込めて体を重ねる…。


「織姫…、感じてるのか?」

「だって…ウルキオラさんが…!」


ぴちゃり…卑猥な水音が掻き混ぜられる度に激しさを増していく。
内側を擦られ肉芽を突かれ、胸の頂上は舌先で転がされて…。
こんなにされて感じないわけがない。
相手がウルキオラさんなら尚更高みへと昇る時間が早まる…。


「んぁ…!ぁぁん…っお願い、します…!もぉ…あ、あン…っ…ぁぁ、ん…はっぁ…ぁん…!」

「…この時間が永遠ならよかったのにな…。」


熱く硬いモノが中に侵入してきた。
ゆっくりと最奥を目指して…。


「ひゃああ…ぁぁんっ…!あ、いい…っ!…はぅ…ぁぁん…」


突かれるたびに揺れる体。
愛されていると実感できる時間。
本当に…この時間が永遠ならよかったのに…。
私はウルキオラさんの背に爪を立てながら中で放たれた熱を感じていた…。


「はぁ…んっ…すご、い…」

「織姫…俺はお前を…」


彼の唇が止まる。
苦しそうに顔を歪めているように見えた。
実際は一瞬だけ瞳が揺れただけだが。
そして続きの言葉は先ほどの私同様に音になることなく終わることを知っている。
私たちは何度も何度も行為を重ねる。
そのたびに言うことのできない気持ちを否定しながら…
彼は私を…
私は彼を…
ただ、








愛してるだけなのに





■END■



アトガキモドキ
裏にしてはそんなに激しくないはず。
2人の心情?的なものを感じてくれれば嬉しいです。
織姫が最初に思い浮かべてた人は一護ですよ。
わかりにくくてごめんなさいorz


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