□小説□

□狂気的愛情
1ページ/1ページ

…俺の頬を伝うものは一体なんだ?
どこから出てきた…?
生温い何かは俺の意思には関係なく両の眼から止めどなく溢れだす…。
…俺はこんなもの知らない…。
そして見下ろす先にあるのは愛しい女の苦しそうな顔。
その顔は苦しみに耐えるかのように、どこか気丈でそれでいて柔らかく微笑んでいた。
今にも消えそうな存在をしっかりと自分の腕の中に抱いて、ただ見下ろす…。
愛しくて、ずっと傍に置いておきたいと思えた唯一の存在。
…その女の命の灯火は今にも消えてしまいそうだった…。
温かな鮮血が流れ落ち、抱いている俺の腕にもその温かさを移すかのように女の力ない腕が動く。
小刻みに震える手で俺の頬に伝うものを拭いながら、声にならない声で言葉を紡ぎだす。
掠れながらもしっかりと俺の耳に響いてくる女の声…。
いや、実際音になっていたのは僅かで唇の動きを読むことで俺は勝手に脳内で女の声を流していたのかもしれない。


『泣いてくれてありがとう。』


そう言った女の眼からも俺と同じものが流れていた…。
俺の顔に添えられていた手を自分の手と重ねる。
触れ合う熱は女よりも俺のほうが高く感じた…。
俺と同じ場所にできた女の孔を眺めて、そこに舌を這わせた。
いつもならそれだけで感じる女の体は俺の腕の中でただ静かに眠り、艶やかな嬌声はもう聞くことはできないんだと理解した…。
自分で殺っておきながら大事に抱いているなんて可笑しな話だ。
愛しかったはずなのに壊した。
そんな自分の行動よりも理解できなかったのは女の最期の言葉。


『泣いてくれてありがとう。』


殺した相手に言う言葉ではないだろう…。
もっと憎しみの籠った瞳で睨んでくれたらよかったのだ…。


「お前は一生俺の腕の中で眠れ…。」


冷えた亡骸を抱きしめ、もう俺の名前を呼んではくれない唇にそっと自身を重ねる…。


「愛している…。愛しているから…」


お前を壊した…。
初めて流した涙はお前だけのために…。
これが最初で最後だろう。
俺が唯一欲したのはお前だけで、それすらも壊してしまった俺に残されたものなどない。
何千年の時が流れようとお前と過ごした日々は色褪せることなく俺を包みこむだろう…。
何億年の時が流れようと俺はお前だけを想っている…。
狂気にも似た俺の愛情を受け止めてくれたお前を、俺は一生手放すつもりはない…。
永遠に…
俺の傍らで…
眠り続けろ…。




■END■




アトガキモドキ
…少し重かったでしょうか?
死ネタですみません、シリアスっぽくてスミマセンorz
いや、もう…なんていうかね?
この二人の愛は普通とは違う別次元のものではないのだろか?と思いまして。
両想いですよ?決してウル→織の一方通行ではありません。
だから織姫は最期に笑ったのです。
ウルは大事だからこそ、自分の手で織姫を壊しちゃったんですよ。
織姫もそれを受け入れているというか…。
あ〜…もうなんか本当スミマセンって感じですorz
こういうの嫌いじゃないんですよ私w


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ