□小説□
□好き過ぎて朱に染まる!
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「あの、リクオ様?」
「どうした?」
「そろそろお風呂に入られたほうがよろしいかと…。」
「…あぁ、もうこんな時間か…。わかった、今行く。」
「あ、の…。」
「なんだ?どうしたんだい?」
「いえ、なんでも…ありません…。」
「ふーん…なんでもないって顔してないけどねぇ。そうだ…風呂、つららも一緒に入るかい?」
「っ…!?」
「そこまで驚くことないだろう。・・・入るのか?入らないのか?」
「えーっと、あの、その…あ〜…。」
「入らねぇんだな。そんなに俺と一緒の湯に浸かるのは嫌かい?」
「そ、そんなことありません…!」
「それなら俺の背中流せるよな?」
「はいッ…!」
**********
「……!」
なんだ…夢か…。
私とリクオ様が一緒にお風呂だなんて…。
なんて夢を見るのかしら…。
私は夢の中の出来事だというのに恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じていた。
高鳴る鼓動はとても寝起きとは思えないほどだ。
確か…一緒に入ることになって、服を脱ぐ途中で目が覚めたのよね…。
大体雪女の私がお風呂だなんて。
真冬にかき氷を食べるのが好きな私が熱いお風呂にリクオ様と二人きり…。
だめだわ…。
そんなこと考えただけで溶けてしまいそうだもの…。
「まったく…。変な夢。」
「どんな夢?」
「はう…!リクオ様…!?」
いつもより目覚め悪いがみんなの朝食の準備をしなくてはいけないと思った私は布団から起き上がろうとした。
と、同時にリクオ様がいることに気付いてなんとも間抜けな声が出てしまった。
まさか独り言を聞かれたなんて…。
というより一体いつからここにいたのかしら?
「あ、あの…リクオ様?いつからここに…?」
本当は「どうしてここに?」と聞くべきなのかもしれない。
リクオ様が私の部屋に来るなんて普段の私なら嬉しいはずなのに、この状況、というよりもあの夢のせいで喜べないでいた。
「ついさっきだよ?つららが顔を赤くしてたあたり。起きてるかなーと思って来たんだけど…。声かけていいのかわかんなくてさ。」
それはつまり私が起きた時とほぼ同時刻じゃないですか!
頭の中を見透かされるなんてことは無いとわかっていてもどうしても考えてしまう…。
あの夢の中でのことを…。
まともにリクオ様を見ることが出来ず俯く私に不安そう声が降ってきた。
「つらら…?大丈夫?嫌な夢でも見た?」
「いえ、そういうわけでは…。」
「あ、もしかしていきなり僕がいたからびっくりしたとか?」
まぁ確かにそれもあるんですが…。
否定できないでいる私の頭をポンポンと、落ち付かせるようにリクオ様の掌が触れてきた。
見上げた先には優しい瞳。
それは吸い込まれそうなほど優しくて…。
そういえば夢の中でのリクオ様は妖艶な瞳をしていた…。
「実はさ、つららの夢見たんだ。」
「私の…?」
「うん。不思議と目が覚めたらつららに会いに行かなくちゃ、って気分になったんだ。」
「どんな夢を見たんですか?」
「聞きたい?」
「はい。」
「じゃあつららが見た夢を教えてくれたら教えてあげる。」
「え、っと…内緒です。」
「…なら僕も内緒。」
「えー!気になりますよー!」
「僕もつららが見た夢気になるんだけど?」
「うっ…。」
言えない。
言えるはずがない。
絶対変に思われる…。
「私なんかの夢を聞いてもつまらないと思いますよ?」
「でも知りたい。」
「リクオ様…」
「わかった!じゃこれだけ教えて?」
「はい?なんでしょう?」
「つららの夢に僕は出てきた?」
「…はい。リクオ様だけでしたっ…!」
「そっか。教えてくれてありがとう。あ、そろそろ朝食の時間じゃない?」
「本当ですね。早くしないと学校にも遅れてしまいますね。」
そう言って2人一緒に私の部屋を後にした。
お互いが見た夢は内緒のままだけれど。
それでも相手の夢に自分がいたことに嬉しさが生まれる。
「あ、リクオ様。」
「なに?」
私は振り返ったリクオ様の頬に軽く口付けた。
「なっ…!?いきなりどうしたのつらら…?」
「ふふ、なんだか夢の話をしていたらいきなりしたくなったんです。嫌でしたか?」
「嫌じゃないよ…。」
「あれ、リクオ様顔が真っ赤ですよ?熱でもあるんじゃないですか?」
「う、うるさいな…!つららだってさっき真っ赤だったろう…!」
リクオ様の照れた表情はすぐに前に向いてしまいそれ以上見続けることはできなかった。
それでもこの朝の出来事は私を幸せにしてくれる…。
私の顔は台所についても緩みっぱなしだった。
夢盗人は最愛の彼
■END■
アトガキモドキ
本当は夢の部分を夢ではなく現実で話をつくっていたんですが途中で挫折orz
続きが出てこないという…
裏にしたくない、けどお風呂ネタがいい、あれ?でも雪女じゃん、つららお風呂入るの?ただの水風呂?
…などと思った結果こんな感じになりましたorz
リクオの夢の内容はご想像にお任せします!
つまりね、二人とも夢に出てくるほど相手のことが好きってことです!
うん、それさえ伝わってれば満足ですw