□小説□
□今さら興味は無い
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「見たでしょ…!?」
「だから何度も言ってんだろ。見てねぇって。」
「いいえ。確かに見られました!」
「しつけぇぞ。見てねぇっつってんだろ。」
部室に入らなくてもわかる声の主たち。
扉に手をかけたはいいが中に入るタイミングをすっかり失っているセナとモン太。
中に入ってとばっちりを喰らうのは気に入らないがこのままでは練習時間が減っていってしまうのも確かなわけで。
「どうするよ?」
「う〜ん…。まもり姉ちゃんが怒ってるし…。今入るのはちょっと…。」
「だよな。しかも相手がヒル魔さんじゃ俺は自分の命の危険さえ感じるぜ。」
「ははは…。」
苦笑いしか出てこないセナ。
部室内で繰り広げられているであろう原因のわからない喧嘩を耳だけで感じ取っていた。
「あっれー?2人ともなんで中入らないの?」
その場の雰囲気には合わないほどの元気のいい声がセナとモン太のすぐ後ろから聞こえた。
振り返ればまだ制服姿の鈴音がいた。
間違いなく部室から聞こえるヒル魔とまもりの穏やかではない応酬が聞こえるはずなのに、鈴音はどこか楽しみながら躊躇いを感じさせない勢いで部室の扉を開いた。
「ああ…!鈴音…今入ったら…!」
「そうだぜ!俺たちは関わらないほうが身のためだ…!」
「2人とも何ビビってんの?妖兄たちが喧嘩するのなんて日常茶飯事じゃない。」
先陣切って鈴音が足を踏み入れる。
少し遅れてセナとモン太も中に入った。
一番最初に目に入った光景が、顔を赤くしているまもりだった。
興奮して赤くなったというよりもどちらかというと恥ずかしそうな赤色だった。
何故かしきりにスカートのすそを気にしながらヒル魔と対峙している。
一方のヒル魔はガムを噛みながら否定の言葉を言い続けている。
「やー!二人とも何言い争ってんの?」
「あら鈴音ちゃん。…もう聞いてよ鈴音ちゃん!」
「なになに!?なんでも聞くよ!」
「それがね…。」
まもりの話はセナたちが来る少々前に遡る。
放課後一番乗りだと思いながら部室に入るとそこには既にヒル魔が来ていた。
まもりのことを一度だけ視線で確認すると再びPCの操作を続ける。
キーを叩く無機質な音がやけに大きく聞こえた。
そんな中、まもりは思いだしたかのようにダンボールから何かを取り出した。
ごぞごぞと探していたものが何なのか気になったヒル魔はまもりが持っているものを見たが、その興味はすぐに消えて行った。
「…今やんのか?」
「あら、今やろうと思ったからこれを持ってるのよ。」
そう言って持っていた電球が入った小さな箱を見せつけてきた。
「今のうちに変えておけば日が沈んで来たときにすぐ電気が点けられるじゃない。」
「へいへい。さっさと交換しちまえよ。」
「わかってたことだけど…代わりにやってくれようっていう優しさは無いのね。」
「あぁ、皆無だな。」
「まぁいいわ。あ!絶対上向いちゃダメだからね!」
「心配しなくてもてめぇの穿いてるモンに興味なんざねぇよ。」
まもりがイスの上に立ち手を伸ばす。
なかなか届かないのか、イスの上で背伸びをし始めていた。
上を見るなと言われたが、足元のふらつき具合を見れば誰でも心配になる。
ヒル魔はまだ交換が終わらないのかと頭を上にあげた。
そしてバッチリと合ってしまった視線。
見上げるヒル魔に見下ろすまもり。
そこから二人の言い合いは始まったのだ…。
「あれだけ上を見ないでって言ったのに…。鈴音ちゃんもひどいと思うでしょ!?」
「んー。でも妖兄は見てないって言ってるんでしょ?」
「私がヒル魔くんを見たときこの人上を向いてたのよ?完璧に見られてるわ!」
「だからそれはてめぇのこと心配してやっただけだっつってんだろ。」
いつまでも続きそうな二人を止めたのは鈴音だった。
「まも姐って、スパッツ穿いてないんだ?強風が吹いたら簡単に見れちゃうねー!」
あははと笑いながら鈴音は言った。
「ほぉ。穿いてねぇのか?そりゃ見てくれって言ってるようなもんだなぁ?」
「な…!だってあれ嫌いなんだもの…!」
「とにかく、俺は無罪だ。」
「…もういいわ。この話はやめましょう。」
「それにお前の下着姿なんざいくらでも見てるんだ。今さらだろ。」
「ヒ、ヒル魔くん…!!」
ヒル魔の何気ない一言に、セナとモン太と鈴音はその意味を理解するまでしばらく呆然としていた。
もちろん2人の新たな原因で始まった言い合いはしばらく止むことは無かった…。
■END■
アトガキモドキ
なんだこれ?
自分でもよくわかんないです…。