*小説*

□ごめんね、みんな
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授業終了の鐘の音は同時に昼休みの始まりも告げた。
屋上で待っているであろう彼女の元へ早く行きたくて僕は先生よりも早く教室を出ようとした。
早く行かなくちゃ。
待たせたくないし一秒でも多く彼女との時間を過ごしたい。
そう思っていたのに…。


「リクオー!悪いんだけど放課後調べ物付き合ってくんね?」


思いもよらない邪魔が入った・・。


「いいけど…何を調べるの?」

「理科の課題。まだ終わって無ぇんだよ。」

「あぁ…あれか。わかった。じゃ放課後ね。」


そういえば課題が出てたっけ、と思いだすが、自分はとっくに終わっていたせいか存在を忘れていたようだ。
確か提出期限は明日だったような気がする。
切羽詰まったような声で僕に頼む島くんに断れるわけが無く、僕は快く了承した。
昼休みが始まって既に数分経っている。
早く行かなくちゃ…。
島くんに手を振って屋上に向かおうとする僕の肩に誰かが触れた。
振り返るとそこにはカナちゃんと…花開院さんがいた。
珍しい組み合わせだなーなんて思ってたらカナちゃんがニコニコと笑いながら僕に話しかけてくる。


「ねぇねぇ、リクオくん今日の放課後暇?ゆらちゃんがリクオくんに聞きたいことがあるみたいで…。」

「え?僕に聞きたいこと?」

「…そうや。大事なことやから…2人きりで話したいんやけど…。」


楽しそうにキラキラとした瞳を僕と花開院さんに向けるカナちゃんとは反対に、僕たちの表情は暗い。
なぜか深刻そうな顔をした花開院さんと、島くんとの約束があるのでどうしたらいいかわからない僕…。


「それじゃゆらちゃん、頑張ってね…!」


そう言い残すとどこかへ歩いていくカナちゃん。
花開院さんはカナちゃんの後姿を見ながら「あの子なんか勘違いしてへん?」と呟いている。
さぁ、困ったぞ…どうしよう…。
二人のどちらかの用事しか付き合えないとかそんなことより、昼休みが始まってもうずいぶんと経っている。
屋上で待たせている彼女のことを考えると、とりあえず今は真っ先にそちらに向かいたい。


「お、リクオじゃん。ちょうどよかった。」


ちょうどよくないんだよ…。
そう心の中で文句を言いながら声のしたほうへ向けば巻さんと鳥居さんがいた。
きっとこの二人も僕に何か用事があるのだろう…。
どうして今日に限って…。


「あのさ、放課後鳥居と一緒に資料室の整理頼まれてんだけどさー。」

「…手伝ってほしいってこと?」

「さすが!わかってんじゃん!それじゃヨロシク!」

「ちょ、ちょっと待って。放課後は…」


島くんに調べもの頼まれてるし花開院さんから話があるみたいだし…もういっぱいいっぱいなんですけど…。
チラリと花開院さんを見れば感情の読み取れない顔で時計を見ていた。
…あ、そうだ…!時間…!


「あのさ、とりあえず放課後のことは後ででもいいかな?」


とにかく早く屋上に行かなくては!と思い、二人に謝ろうとしたとき…


「あ!リクオ様、じゃなくて…リクオくーん!」


…屋上にいるであろう彼女がいた…。


「どうしたんですか?屋上で待ってても来ないから心配したんですよ?」


二人分のお弁当箱を持ってつららは僕を軽く睨んでいる。
でもつららが来てくれたのは丁度いいかもしれない…。
島くんや花開院さんや巻さんや鳥居さんには悪いけど…。


「ごめんね、巻さん、花開院さん。実は放課後は先約があって…。つららと出かけなくちゃいけないから…今日は無理なんだ。本当にごめんね?」


本当の先約は島くんだったけど…。
適当に言い訳をして二人に謝る。
それに嘘ではなく事実にすればいいだけのことだし。
去っていく2人を見送り、今度はつららに謝る番だ。


「ごめんつらら!屋上に行こうとするたびに話しかけられちゃって…。」

「それはいいんですけど…。あの、放課後って…私たちどこかへ行くんですか?」


うん、もっともな疑問だ。
そんな約束してないし。


「どこ行きたい?つららの行きたいところに行くよ。今日のお詫びに。」


まだよくわかってない表情を浮かべつつも、つららは「それじゃ…」と自分の行きたい場所を考えているようだ。


「ゆっくりでいいよ。放課後までまだ時間あるし。」


島くんにも謝らなくちゃな、と思いながらつららの手を引いて屋上への階段を上って行った。
放課後は他の誰かではなく大切な子と過ごしたいから…。











最優先されるべきは君



■END■



アトガキモドキ
カナちゃんってゆらはリクオが好きだと勘違いしてるんだよなーとか思ってたらこんな話が出来あがってましたw
自分でも謎すぎるwww


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