*小説*

□白いワンピース
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何もしていないのに照りつける太陽のせいで汗が肌を流れていく。
澄み切った青空には夏らしい雲が漂っていた。
その真白な雲と同じ色のワンピースを着て麦わら帽子を被ってみんなを待つ。
今日は夏休みに入って初めての部活の日だった。
提案したのはもちろん清継くん。
待ち合せ10分前のこの時間で私ひとりなのはみんなやる気が無いからなのか…。
自分でもどうして早めに来てしまったのか疑問に思ったが、その答えはあっさり見つかった。
会いたい人がいるから…。
ただそれだけ。
それ以外にこの場所に立っている理由は無い。
学校では毎日理由が無くても会えるが夏休みはそうはいかない。
一週間ぶりに幼馴染に会えると思ったら家を出る足が急いでしまったようだ。


「あ、もう来てたんだ?」

「早いねー。」


時間を確認しようと腕時計に目線をやったとき鳥居さんと巻さんの声がした。
おはよう、と付け足すように挨拶されたから私も挨拶を返す。
二人が来てから次々集まる清十字団。
島くん、清継くん、ゆらちゃんと集まり、残るはリクオくんと及川さんだけ。
まさか一緒に来たりしないよね…?
学校にも一緒に行ってるみたいだし…
でも夏休みにわざわざどこかで待ち合せて2人で来る、なんてこと無いよね…。


「あれ?僕たちが最後?待たせちゃってごめんね。」

「もうっ。リクオくんが服を選ぶのに時間かけるからですよ?」

「だってつららがあの格好のままで行くって言うから…!」

「着物の何がいけないんです?」

「いや、だからさ…。でもそのワンピース似合ってるんだし結果オーライでしょ?」

「…これはリクオくんが買ってくれたものだから出来るだけ着ないようにしてたのに…。」

「え…!?もしかして気に入らなかったの?」

「いいえ。その逆です。気に入り過ぎて着れないんです。汚したくないですし…。」


私の予感は当たってしまった…。
二人仲良くこちらに向かってくる姿を見てると胸がもやもやしてくる…。
聞こえてくる会話はまるで朝からずっと一緒にいたような…ううん、同じ家から出たようなことを話していて余計にイライラしてしまった…。
そして及川さんが来てるワンピースから目が離せないでいた。
リクオくんから貰ったらしいその真白なワンピースは私が着ているのと似ていた…。
同じようなデザインに同じ色のワンピース。
似ているのにまったく違うような気がした…。
私が着てるこのワンピースにリクオくんとの思い出なんて無いもの…。
それが苦しくて…だんだん悔しくなってくる…。


「よし!みんな集まったね!それじゃ今日の活動を発表するよ!」


みんな近くにいるのにわざわざ大きな声で話す清継くん。
活き活きとした彼とは反対に私はどんどん沈んでいく。
まるで深くて暗い穴の中から光を見ているような…そんな感覚。
それほどに親しそうなリクオくんと及川さんを見ているのがつらかった…。


「ねぇ、ごめん。今日は早退していいかな?ちょっと頭が痛くて…。」


清継くんの説明の邪魔をしてそれだけ告げると私は家に帰ろうと来た道を戻って行った。
だってこれ以上あの場所にいたら泣いちゃいそうで…。
学校にいるあの二人を見てるだけでも苦しかったのに休みの日にまで同じ光景を見せられたんじゃ気分が沈んで当然だ…。
俯く私の視界に入るワンピースの裾が私の涙腺を壊した…。
家に帰ったら真っ先に着替えよう…。












気持ちも着がえられたらいいのに





■END■




アトガキモドキ
リクつら←カナ最高!
カナちゃん視点だとリクオとつららが絡んでるところがあんまり書けないorz
本誌では夏休み入ったみたいなののでそれに合わせてみました。
カナちゃんはリクオとつららが一緒に住んでるって知りませんよね?
まぁ知ってたら大変だよねww
リクオとつららは家でイチャついてたってことでお願いします


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