*小説*

□男≒女
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なんで僕はここにいるんだろ?
見渡す限り女性用の下着がカラフルに売り場を飾っていた。
客だってどう見ても女性ばかり。
男の僕がこの空間にいるのがなんだか変で、それでいてちょっと恥ずかしいような感覚。
僕は視線を彷徨わせながらただじっと待つ。
彼女が買い終わるのを…。
なぜここにいるのかと聞かれれば、それはおそらく僕が元凶なのだろう…。
あんなこと言わなきゃよかった…。
僕は数時間前の自分の言動を後悔した…。










*************









「つらら」

「はい?」


僕が名前を呼べば彼女の綺麗な声が笑顔と一緒に帰ってくる。
つららは洗濯物を干す手を止めて僕を見ていた。
僕はずっと洗濯物に目を向けたまま少し黙る。
時々雲に隠れてしまう太陽は空の頂から洗濯物と僕たちに光を降り注いでいた。
雲の切れ間からひょっこり太陽が顔を出したとき、つららの手の平が僕の顔に影をつくった。


「リクオ様…?」


左右に手を振って僕の意識があるかどうか確認している。
沈黙のままの僕にそろそろ耐えられなくなったのだろう。
それでも僕の視線は洗濯物に向かったまま。


「洗濯物が何か?」

「あ、うん…。ちょっと気になって。」

「なんですか?なんでもおっしゃってください。」

「つららはいつまでサラシなの?」

「…え?」

「ブラはつけないの?」

「…でも私持ってませんし…。」

「じゃあブラ買えばいいんじゃない?」

「…そうですね…。それじゃ一緒に買いに行きましょう!」

「え?何で僕まで一緒に?」

「それはもちろんリクオ様のお好みのブラを買うためですよ。どうせ下着なんてリクオ様の前でしか見せませんし。」

「えぇ…ぇえぇぇ…!?」

「善は急げです!早速参りましょう!」


洗濯物を干しきれていないとか僕の意思とかはどうやらつららを止める理由にはならないらしく、流されるままにつららと一緒に出掛けていた…。










*************











「あ、リクオ様!これなんかいかがですか!?」


いや、僕が身に付けるわけじゃないし。
どちらかというとそのセリフは僕が言うべきなんじゃないだろうか。
つららの手には純白のブラが。
レースの飾りに中心にはリボンがデザインされている。
可憐という言葉がしっくりくるようなブラを片手で持ちながらつららは僕の反応を待っていた。


「あ〜…いいんじゃない?」

「もう!さっきから何を見せてもそればかりじゃないですか!」

「だって…どう反応したらいいかわかんないよ…!」


こんなところで言い合いになるのはまずいと思い、寸でのところで声量を抑える。


「リクオ様は…私に興味が無いんですか…?」

「いやいやいや!そんなことは無いよ!」

「だったら…」


一緒に選んでください、と瞳を潤わせながら言われたら断れるわけがない…。


「わかったよ、ごめん。出来れば…あんまり派手じゃないのがいいな。」

「あ、じゃあこれなんかいいかもしれません!」


泣きそうな顔はどこへいったのか…。
つららは近くにあったブラを僕に見せてきた。
確かに僕の言葉通りそこまで派手ではない。
しかしそれを見に付けたつららを想像してしまうとやっぱりさっきと同じように「いいんじゃない?」と言うことしかできない。
目に見えて不機嫌になるつらら。
はぁ…。


「つららなら…どれだって似合うよ。」

「えっ…?」


本当のことを言っただけなのになぜかつららは顔を赤く染めている。
どうやら機嫌は少なからずよくなったようだ。
それからも僕たちはしばらく下着選びに時間を費やしていた。











男≒女は常識!




■END■



アトガキモドキ
ネタ提供者奏山美祢様!ありがとうございます!
つららってブラしてるのかな?
やっぱサラシ?
しかしリクオがヘタレ全開だな〜


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