♪小説♪
□これ以上愛せる人なんていない。
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「きゃっ」
「織姫!」
「まったく・・・何もないところで転べるのはお前の才能だよな。」
「ありがとう。支えてくれて。」
「お前一人の体じゃないんだから気をつけろよ?」
彼女から目を離せない。
今みたいに転びそうになるのを支えるためでもあるが、またいなくなってしまうのが嫌だったから。
もう二度と手放したくないと思うから・・・。
「お腹結構大きくなってきたな。」
「うん!元気に生まれてきてくれるといいね!きっと一護君に似た赤ちゃんだよ。あ、でも生まれた瞬間から眉間にシワがよってたらどうしよう・・・。赤ちゃん力の入れすぎで疲れちゃうよね・・・。」
「バカだな織姫は。とりあえず泣くのが子供の仕事だろ。」
織姫と結婚して、家族がもう一人増えて、幸せで・・・。
でも幸せなのは俺だけのような気がときどきする。
気付かないように、目を逸らしていたつもりでも、やはりわかる。
織姫が時折悲しそうにする表情の中に誰がいるか・・・。
それを理解するのが怖くて。
自分は臆病なんだな・・・。
この幸せが崩れるのが怖いから・・・。
俺は決して口にすることはないだろう。
アイツのことを・・・。
「買うものはもういいのか?」
「うん。荷物持たせちゃってごめんね?重いでしょう?」
「そのために付き添いしてんだから遠慮すんなよ。」
「ありがとう。」
一度、賭けてみようか・・・。
彼女が『愛してる』と言ってくれるかどうか・・・。
「織姫。」
「なーに?」
「俺は、お前のこと愛してるよ。」
「変な一護くん。どうしたの?」
「お前は?」
「え?」
「俺のこと・・・?」
「もちろん!大好きだよ。」
ありがとう、織姫。
やっぱり俺はお前を失うことを選択できないから。
『愛してる』と言ってくれるその日まで待つから・・・。
「夜ご飯どうしようか?特に考えないでお買い物しちゃったからなー。」
「やっぱ寒いし鍋とかいいんじゃないか?」
「そうだね!もうちょっとしたら三人でお鍋できるしね!」
「もうちょっとっつーか数年後だな。」
「今から楽しみ!」
未来を全部君にあげるよ。
君といつまでも一緒にいたいから・・・。
■end■