◆小説◆

□The reason is unnecessary.
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学校だけが私と貴方を繋ぐものじゃない。
手の中にある小さな機械をいじる。
電話帳の一覧を開けば『ハ行』で止まってしまった。


「ヒル魔くん・・・、もう寝たかな・・・。」


メール作成画面を開こうか。
いっそ電話してしまおうか。
それとも電源ボタンを押して待ち受け画面に戻してしまおうか。
明日また会えるというのに何故か今すぐヒル魔くんという存在を感じたくて・・・。
暗闇の中一つだけ光る携帯の画面は発信画面へと変わる。


「押しちゃった・・・。」


にわかに緊張してしまい、耳元から聞こえる呼び出し音を「出てほしい。話したい」、「出ないで。何て言っていいかわからない」と相反する気持ちで聞いていた。


「何だよ・・・。」


短い呼び出し音だった。
かけて2秒も経っていないと思う。
それとも自分の時間の感覚がおかしいのだろうか?



「ヒル魔くん・・・?」

「俺の携帯に俺以外の誰が出るっていうんだよ・・・。」

「あ、そうよね・・・。」

「どうしたんだ?」



特に用は無い。
なんて言えない。
声が聞きたかっただけなんて言ったらどんな反応をするかしら?




「えっと・・・。それにしてもヒル魔くん電話出るの早かったね。」

「あぁ、丁度携帯いじってたからな。つーか話を逸らすな。」

「あ、ごめんなさい。」



つい謝ってしまった。
だってなんて言えばいいのか自分でもわからないんだもの。
もっと言えば何で電話したのかさえわからない。



「寝れねぇのか?」

「ううん。ただね・・・」



やんわりと心配している口調になるヒル魔くん。
私は心配させるために電話したわけじゃいから。
ただ・・・。



「ただ・・・?なんだ・・・?」

「ヒル魔くんの声が聞きたかっただけよ。」

「ケケケ、んなことでいちいち電話なんざしてたら請求書見んのが怖くなるぞ。」

「確かにそうね。でも聞きたかったんだもの。」




学校だけじゃ足りないの。
本当はもっとたくさんの時間を共有したいと思うの。
そのためなら電話代くらいなんてことはない。



「・・・俺が電話に早く出た本当の理由を教えてやろうか?」

「え?」



そんなものがあるのか。
たまたまじゃないの?



「俺も・・・お前の声聞きたいと思ってたからだよ。」

「え、嘘・・・。」

「嘘言ってどうすんだよ。」

「どうしよう・・・すごく嬉しい・・・。」



自分と同じ気持ちだったのかと考えると本当に嬉しかった。

「泣くなよ。」

「泣きません。」

「けどまさかお前からかかってくるとは思わなかったけどな。」

「もうちょっと待ってればヒル魔くんからかかってきたのにね。待ってればよかったわ」



自分から電話したことに後悔はないが、やはり相手からのほうが嬉しいものだ。



「なんかね、今すっごく繋がってるなぁって思うの。」

「は?」

「私もヒル魔くんもただ声が聞きたいっていう理由だけで電話しようとして。それってすごいと思わない?」

「そうか・・・?」

「えぇ。だってその瞬間お互いのことしか考えてないわけでしょう?」



少なくともさっきまでの私の脳内はヒル魔くんで埋め尽くされていた。



「なんつーか、めでたい頭してんな。」

「失礼ね。でもそんな頭をした私の声を聞きたがってたのは誰かしら?」

「くだらなねぇ、もう切るぞ。」

「うん。こんな時間に電話してごめんね。おやすみなさい。」




短い電話だったけど、感じたものは大きくて。
通話終了後もしばらく携帯を見つめていた。
こんな小さなものが私とヒル魔くんを繋げてくれる。
でも・・・
携帯なんてなくてもお互いが想いあってればその瞬間は繋がってる・・・。
なんだか満ち足りた気分になり目を閉じた。
きっとすぐに眠れそう。
深い眠りから目覚めたら、また電話をしてみようか・・・。
一番に「おはよう」と言ってあげるから・・・。







■END■






アトガキモドキ


電話だからもっと会話を多くしたかったのに失敗したorz
なんかいろんな人がでてくるような小説が書きたいなぁ。

 

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