♪小説♪

□become composed
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長く、そして暗く続く廊下をウルキオラは少し歩調の早い足取りで進み、無意識に一つの扉の前で止まった。


――用もないのに何故俺はあの女に逢いに来た?


扉に手をかけた瞬間そう頭をよぎったが、深く気にすることなく開こうとした・・・。

・・・が、扉は勝手に開いた。


――いつからここは自動で開くようになったのだ?

間抜けなことを考えるウルキオラに答えを教えたのは織姫だった。


「わ!やっぱりウルキオラさんだ!そうじゃないかと思ってたんです。・・・どうしたんですか?」

「いや・・・特に用はないんだが。・・・入っても構わないか?」


どうやら扉はウルキオラの霊圧を感じた織姫が開けたらしい。
突然の訪問者にもなんら警戒もせず満面の笑みを浮かべ招き入れる織姫に、ウルキオラは何故か不安に駆られた。



「お前は誰が来てもこうやって中に入れるのか?」

「え?・・・いつもはウルキオラさん以外あまり来ませんし・・・。たまにグリムジョーさんが来るだけだから・・・。」


――ほう。アイツがここに来ていたとは初耳だな・・・。



「あの・・・もしかして怒ってますか・・・?」



グリムジョーのことを聞かされ少々驚いていが別に怒っていたわけではない。



「怒っていたわけではない、気にするな。」

「よかったー!ずっと黙ってたから怒らせちゃったかと思いました。」


ソファに腰掛ける俺に続くように、女が座るのを横目になんとなく確認し少し考える。


グリムジョーはこの部屋に何しに来ていたのだ?
怪我でもしないかぎりこの女に用はないだろう。
俺は藍染様から世話係を任されているためここに来ることはあるが、あの男が来る理由がさっぱりわからない。

それとも・・・。




ウルキオラは上手くいえない感情に支配され、考えてはまた次々と疑問が増えていく出口のない迷路に入ってしまったかのようだった。


「今日ウルキオラさんが来てくれて嬉しかったです。やっぱり傍に誰かいるだけで安心できるから・・・。」

「必要なら俺を呼べ。すぐに来てやる。だから・・・。」


――だからあの男をここに入れるな。―


そう続くはずであった台詞を気付けば殺していた。


・・・俺はあの男に嫉妬でもしていたというのか・・・?



出口のないはずだった迷路から光が見えたが、そこに辿り着いてはいけないと瞬時に理解した。
でなければ自分が壊れていく、そんないいようのない感情がウルキオラの中で生まれ、そしてそれは成長しはじめる・・・。




――!





「大丈夫ですか?今日のウルキオラさん、なんだか変ですよ?なにかに怯えている様な・・・。」



温かく柔らかいものに包まれていると思ったらその正体は織姫だった。



「・・・なにをしている・・・?」

「あ、ごめんなさい!でも、こうすると落ち着くって誰かが言っていたような気がするから・・・。・・・あれ?心音聞くと落ち着くんだっけ・・・?」



どこから得た情報か知らないが、俺は今女に抱きしめられているわけで・・・。

そして普通よりも明らかに膨らみのある双丘に顔を埋められ、無理矢理に心音とやらを聞かされる。




―どくんッ・・・どくんッ―



一定のリズムを刻む音は、心臓がポンプとしての機能を果たしているということがわかる。


・・・確かに・・・。
妙に落ち着くものがある・・・。
心地良いとはこのことをいうのだろう・・・。

暫く女に身を預けているのも悪く・・・な・・・い・・・。



「ウルキオラさん・・・寝ちゃいました・・・?」




自分の胸の中でなんの反応も示さず、小さいが規則正しい寝息を立てているウルキオラに、答えのわかっている終止疑問を織姫は小声で投げかけた。



「ウルキオラさん…おやすみなさい・・・。」



織姫はウルキオラをそっとソファに横に倒すと、暫く傍でその寝顔を見ていた。
時々寝返りを打つウルキオラの漆黒の髪を指で梳きながら、何に引っかかることもなく通るその髪を羨ましく思っていた。



「綺麗な髪ですね・・・。長くしても似合いそう・・・。」


二人しかいない空間に織姫の声が響く。


「ゆっくり眠ってくださいね・・・。」



織姫はウルキオラの額に軽く口付けると、愛しそうにその寝顔をもう一度見た。







◆End◆
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