◆小説◆
□素敵な一日の始まり
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「ヒル魔くん?朝だよ?起きないの?」
カーテンと窓を勢いよく開けて外の光を中に流し込む。
暖かい日差しに夏の香りが乗ってきて、頬を撫でる微風はなんて気持ちいいのだろう。
こんなに素敵な朝だというのに、ベッドから起き上がろうとしないヒル魔くん。
「・・不法侵入・・・。」
寝起きのせいか掠れた声で言うヒル魔くん。
「あのね、ヒル魔くんが私に鍵くれたのよ?」
「・・・んー・・。」
まるで起きる様子無し。
朝の弱いヒル魔くんのためにブラックコーヒーを淹れにキッチンへと向かう。
ついでに軽めの朝食作り。
どこに何があるか、もしかしたら私のほうが知ってるかもしれない。
この部屋の鍵を渡されてからこうやって朝起こしにくるのが当たり前になってる日常。
だからいつもよりも少し早めに起きる。
制服を着て鞄を持って向かう先は学校ではなくヒル魔くんの家。
『毎朝俺を起こしに来い。』
命令口調で渡された合鍵。
戸惑う私にニヤニヤした顔で『できねぇのか?』なんて挑発されて。
そんな安い挑発に乗ってしまう私も私だけど・・・。
それからこうやって定時刻に起こしに来てる私。
不思議とめんどくさいという気持ちはなく、毎朝ここに来るのが楽しみになっていた。
「よし、こんなもんかな。」
作り終えエプロンを外しもう一度ヒル魔くんの元へ。
案の定、まだ寝ているヒル魔くんがいた。
そしてこのあとの展開がわかっているだけに起こしに行くのが少し恥ずかしい。
「ヒル魔くん、朝ごはんできたよ?そろそろ起きよう?」
「・・・してくれたら起きる。」
「・・ッ//」
寝返りを打ちながら仰向けに体勢を変えるヒル魔くんに近寄り、そっと唇を重ねた。
何度もしているキスのはずなのにやっぱり慣れなくて恥ずかしい。
普段はヒル魔くんからしてくるからこうやって自分からするのはこの朝のキスだけ。
私は重ねて終わり。
重ねたあとはいつも通りヒル魔くんに口内を蹂躙される。
それがとても心地よい・・・。
「ケケケ、やっぱお目覚めのチューが無いとな。」
「もうっ///早く顔洗ってきなよ。」
「おー、そうする。これ以上からかうと糞マネが茹で上がりそうだしな。」
解放された唇の温かさを感じながらヒル魔くんが洗面台へ向かうのを見送る。
まだ余韻の残る感触、熱く疼く体の内側。
キスだけでこんなに紅潮する頬。
あぁ、恥ずかしい・・・!
まだヒル魔くんの残り香のするベッドに横たわる。
眠たかったわけではないのに今すぐ眠れそうな気がした。
なんだか、ヒル魔くんに包まれてるみたい・・・。
水の流れる音が遠くから聞こえてきた。
・・・もう洗顔し終わったのかな?
でも、もうちょっとだけここにいてもいいよね・・・。
目を瞑ると簡単に寝てしまいそうだったから、必死に瞼を上げて眠気に逆らう。
「人ン家で二度寝デスカ?」
「違うわよ。ちょっと横になってただけ。」
「ほーう。今日の下着はピンクか?」
「えっ!?」
慌てて起き上がりスカートの裾をおさえる。
「工ッチ。」
「短いスカートで寝転がってるテメェが悪い。」
「ヒル魔くんて実は変態だったんだね。」
「男はみんな生まれながらに獣だ。ってことで・・・」
「え、ちょッ・・何・・・!?」
広いベッドにまた逆戻り。
押し倒されてしまったようだ。
「お前な、あんな姿見せといて理性保てるわけねぇだろ。」
「でも、ダメだよっ。ほら、もう学校に行く時間になっちゃう!」
「俺がどれだけ我慢してたと思ってんだ?」
「ヒル、魔くん・・・ッ」
首筋を這うヒル魔くんの舌先。
初めての行為にどうしたらいいのかわからず嫌がる余裕すらない。
・・・でもッ!
「ヒル魔くん・・・、」
「学校行こう!」
「…して?」(裏)