★小説★
□守りたいのは…
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「くだらん考えは持つな。お前は既に我らの同胞だ。」
「…はい…わかってます。」
「…だといいがな…。」
何も望んでない。
助けに来てほしいなんて思って無い。
私はここでやるべきことを見つけたのだから。
みんなを裏切ってしまった私には戻る場所も、居場所もない。
暗く冷たいこの鳥篭のような場所で私は生きていく…。
「…お前を助けに来た奴は…俺が殺す。そのとき…お前は俺の邪魔をするか…?」
「…しませんよ…きっと。…もし本当に誰かが私を助けに来たら…私は何も言えずにただ見ているだけだと思います…。」
「…そうか…。」
「はい…。だから…お願いだから…」
貴方だけは私の傍にいてください…。
世話係でも何でもいい。
ただ傍にいてほしい。
…そう思うことすら許されないと知っているから、声に出すことはできないけど…。
飲み込んだはずの言葉は別のカタチとなって溢れだす。
一筋の雫が頬を流れ落ちていくのを止める術を私は持たない。
彼と向き合ったまま、音を殺して涙を流す…。
「現世は…冬という季節らしいな…。」
天井に近いところにある小さな窓には黒い鉄格子。
その隙間から見える偽りの月を見上げながら彼は静かに言った。
冬だからなんだというのだ…?
此処に居る私にはまるで意味のないものだった…。
「それが…どうかしたんですか…?」
「冬は…凍るように寒く、何もかも冷たく包むのか?」
「だから…っ」
だから何が言いたいのだ、と問い返すはずが、目尻に感じた冷たさに何も言えなくなってしまった。
近づいてくる腕。
伸ばされた指。
その先には止めどなく溢れだす私の雫。
触れた瞬間から彼の指先は濡れて行った…。
「何もかも凍えてしまうなら…お前には丁度良い季節かもしれんな…。」
「な、んで…っ」
「此れが…凍ってしまえば流せなくなるだろう…?」
「…っ…!」
そう言って私の涙を舐めとった。
不意に感じる生暖かい感触からは不思議と逃げようという考えは生まれなかった…。
「そう…ですね…。」
少しの沈黙の後にやっと紡ぎだせたのはたったの一言で。
彼の細い腕を掴みながら、私は無意識に震えていた。
何故震えるのか自分でもわからないが、振り払われることの無い自分の腕を見て幾分か安心する。
「…。」
「…。」
どれくらいそうしていたのだろうか…。
流れる時間はゆっくりと、しかし確実に私と彼を繋げていく…。
「さっき…私はただ見てるだけ、って言いましたよね…?」
「あぁ、言っていたな。」
「でも…たぶん、それだけじゃいられなくなる場合があると思います…。」
「…。」
無言で私を見つめる翠の瞳に先を促され、私は一呼吸置いてから言った…。
「ウルキオラさんが…危なくなったら…そのときは私が、守ります…。」
はっきりとした声が二人だけの空間に妙に響く。
私の言葉に何を感じたのかわからないけど、彼はただ黙って背中を向けた。
向かう先はこの部屋から廊下へと出ることができる扉。
「それは有り得ない話だ…。その逆は…有り得るがな…。」
顔だけをこちらに向けながらそれだけ言うと部屋を出て行った。
「逆は有り得る…?」
声に出して先ほどの彼の言葉を思い出す。
それは…私が危なくなったら守ってくれるということだろうか…?
見つめた先に彼はもういなくて…。
胸の奥がじんわりと熱を生むのを頭の端で感じていた…。
私が貴方を守るから…
貴方は私を守って…?
■END■
アトガキモドキ
なんていうか、唐突に始まり唐突に終わりますねw
仕方ないよ、うん。
だって私の妄想だものw
これは本誌のほうを若干意識して書きました。
一護を助けるのではなく、ウルを助ける展開のほうが萌えるな〜と思ったんで。